中国政府のコロナ政策の大転換が、各方面に影響を及ぼしている。ジャーナリストの高口康太さんは「中国人はコロナ治療薬を自力で確保しなければいけなくなったので、日本の風邪薬に注目が集まっている。とりわけ『パブロンゴールド』が人気で、これから品薄になる恐れがある」という――。

「君子豹変す」としか言いようがない中国のコロナ政策

「風邪薬、買いこんでおいたほうがいいですよ。すぐに買えなくなりますから」

数日前、ある在日中国人の友人からメッセージが送られてきた。背景にあるのは、中国のコロナ対策の転換だ。

中国のコロナ対策がなんで日本の風邪薬不足につながるの? と不思議に思われるかもしれない。ちょっと面倒だが、この「風が吹けば桶屋が儲かる」的な連鎖について説明させてほしい。

もともとのコロナ対策は、無症状の感染者も濃厚接触者もそれどころか濃厚接触者の濃厚接触者までもすべて隔離してしまう。ついでに、複数の感染者がでたハイリスク区画は封鎖してしまう。というものだった。感染者も感染疑いのある人もまるっとすべて“あちら側”に封鎖する。それによって一般社会はウイルスゼロの日常生活が送れるのです……というのが中国のコロナ対策だったわけだ。

ところがこの政策が12月に入ってがらりと転換した。中国の人々が怒りの声をあげた抗議活動「白紙革命」の影響が大きかったのか、それとも日々増え続ける感染者数に中国政府ももう無理だと音を上げたのか。政策転換の理由はわからないが、ともかく従前の政策からは180度の急展開である。

感染者を無理に見つけ出すことはやめます。濃厚接触者はもちろん、無症状感染者も治るまで家にいていただいて結構です。オミクロンなんて恐くないですから。一応、オススメのお薬リストを用意しておきましたので、それを飲んで寝ておいてください。あ、薬は自力で入手してくださいね……。

こんな具合である。今までは「ゼロコロナをやめれば100万人が死亡する、だから「人民至上! 生命至上!」(人民第一! 生命第一!)を旗印にきっつい行動制限をかけます。これも人民の皆様のためです、ご了承ください。苦しいかもしれませんが、これが一番科学的、効率的、経済的な対策なのです。この対策をやめたらアメリカや日本みたいにばんばん人が死にますよ!!!」という説明だったのだが、あれはいったいなんだったのか?

そういえば、「君子豹変す」は中国のことわざであった。改めてその意味を思い知った次第である。

上が有症状感染者、下が無症状感染者(出所=テンセントニュースの新型コロナウイルス情報ポータルより)
上が有症状感染者、下が無症状感染者(出所=テンセントニュースの新型コロナウイルス情報ポータルより)