大泉洋がモーゼとなる

紅白再生、いや、再生しなくたっていいけど、少なくとも“ちゃんと盛り上がる”ためには、団塊ジュニアシフトが鍵となる。そろそろ子育ても終わって、会社でもある程度結果が見えてきて落ち着く。自分の時間ができて自由になるお金もあって、情報収集の基礎能力も十分にある。かつ、周りを見回す余裕があり、自分以外への興味がまだ枯れていない(年取って体悪くなり始めると、自分のことで精一杯になるからね)。

篠原涼子に工藤静香、ジャニーズ、坂道諸姉にK-POP、ヒゲダンにキンヌー、Perfumeに純烈、星野の源さんに福山雅治、MISIAとゆず。2022年の出場者リストに対して「FM3層(50代以上の視聴者)を大胆に捨てた」との分析があるが、その通り、これは団塊ジュニア層を対象のど真ん中に据えた戦力配置(団塊ジュニアシフト)なのだ。

そこに、司会者である大泉洋(彼を北海道から全国へ連れ出した『水曜どうでしょう』世代は団塊ジュニア)が、大河の顔を利用し全世代にやけに好感度の高い面白モーゼとなって、新たな「昭和平成令和歌合戦ぽんぽこ」を切り拓く。橋本環奈、スペシャルナビゲーターの櫻井翔、そして桑子真帆アナと、団塊ジュニアで彼らを特別嫌いな人はまあいない、絶妙な布陣である。

祭りには巻き込まれた方が断然楽しい

インフラNHKは、高齢者ばかりにおもねらず、だからといって若いZ世代にも媚びず、正しく日本のボリュームゾーンにピントを当てたのだ。アジア諸外国に比べて圧倒的にコンテンツ業界のグローバル化に遅れた日本の、日本による、日本のための紅白歌合戦。これが2022年の回答だということなのである。

カギは、ターゲットされたオタク団塊ジュニアの熱量が、その企みに応えるかだ。一つだけ言えるのは、「祭りには巻き込まれた方が、人生断然楽しい」ということ。これでとうとう明菜ちゃんが出て「DESIRE」でも歌ったら、テレビの前で30代から50代の女子が突然全員立ち上がってエアマイク持って朗々と歌い上げ、日本中で明菜祭りのツイートと動画が上がるだろう。

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