精子を提供するのは主に慶應大学医学部の学生(3~6年生)であるが、匿名を条件としているので、のちに血がつながった父親を探そうとしても大学は教えてくれない。それ以前に親が子供に告知をしないことがほとんどだから、子供も自分の父親とまさか血がつながっていないとは思いもよらないだろう。

大野和基『私の半分はどこから来たのか AIDで生まれた子の苦悩』(朝日新聞出版)
大野和基『私の半分はどこから来たのか AIDで生まれた子の苦悩』(朝日新聞出版)

ところが、最近になって先進国においてAIDで生まれた人が声を上げ始めた。なかにはこの技術の全面禁止を訴える人もいるほどだ。すべての家庭に当てはまるとは限らないが、親がアイデンティティ形成の根幹にかかわる、最も重要なことで子供に真実を伝えていないため、家庭内に説明のつかない違和感や緊張感が絶えず漂っているという。

なお、自分がAIDで生まれたことを子供は、両親の離婚や、病歴を知ろうとしたときに知らされることが多い。病院で親の病歴を書こうとするときに、母親から「あなたは父親とは血がつながっていないから、記入しなくてもいい」と突然告白された人もいる。加藤の場合は、のちに「あなたが医学部に行ったときから、いつかはバレると思った」と言われたという。さらに母親を追及しようとしたが、あきらめた。

※後編「同じ精子提供者から75人の兄弟姉妹が生まれた例も AID(非配偶者間人工授精)が抱える重大な問題点」へつづく

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