100円のものを1000円で売るのも、そんな値段で買うのも自由

法律的には許されているといっても、やはり人気グッズや商品の転売は許しがたいと思う人が多いでしょう。

民法には、「契約自由の原則」があります。これは、人が結ぶ契約は、公の秩序や強行法規に反しない限り、当事者が自由に締結できるという民法上の基本原則です。当人たちが合意してさえいれば、100円で買ったものを1000円で売るのも自由ですし、中にはそんな価格でも購入したい人がいます。人気商品や品薄商品の転売を規制するということは、そうした私人間の、本来自由な取引を法律で規制するということになりますから、規制をするには規制の正当性を根拠づける十分な理由が必要になるはずです。

グッズなどの転売は大きな社会問題にもなっており、最近では販売者が購入希望者に対して商品に関する質問をして、答えられない場合は販売を拒否するなど、販売者側が転売を防止するための策を講じるケースも見られるようになりました。しかし、契約自由という大原則との関係で、このような個別の対応に委ねることを超えて、転売一般について一般的な規制をすることには消極的にならざるをえないのが現状ではないかと思います。

コロナ禍でマスク・アルコール消毒製品の転売が一時的に規制されたのは記憶に新しいですが、これが許されたのは、コロナ禍での国民生活を守るという重要な目的があったからでした。

古着や古本などの古物の売買は、それじたいが物の流通を促進しているものであり、チケットや人気商品の転売とは異なります。中古ゲームソフトの販売が著作権法違反にあたるか争われた事件があります。この事件では大手ゲームメーカー6社が、頒布権の侵害を理由に中古ゲームソフト販売店などを運営する企業に対し、中古ゲーム販売の差止めと廃棄を求めていました。

2002年に最高裁は、ゲームソフトじたいは映画の著作物と認めてゲームメーカーの頒布権を肯定しつつも、ゲームメーカーが最初に対価をもらってゲームソフトを譲渡した時点で頒布権が消えると判断しています(最判平成14年4月25日判例時報1785号9頁)。もし中古ゲームにもゲームメーカーの頒布権が残るとしたら、譲渡するたびにゲームメーカーにお金が入ってしまいますから、妥当な判断と言えるでしょう。

転売チケットでよくあるトラブル

最後に、転売についてよくある質問を一つご紹介しましょう。

小林航太『オタク六法』(KADOKAWA)
小林航太『オタク六法』(KADOKAWA)

【Q】どうしても行きたかった推しのライブ。フリマサイトで転売されているチケットを購入しました。しかし当日会場に行ったものの、主催者に禁止されている転売チケットであることを指摘され、入場できませんでした。売主に返金を求めましたが返してくれません。

【A】お金を振り込んだがチケットが届かないなど、チケット転売のトラブルは後を絶ちません。特に規約に定めがない限りは、公演の主催者には基本的に返金を求めることは難しいでしょう。

そうなると売主に返金を求めることになりますが、個人と個人の取引でチケットが転売された場合、転売を理由に入場を拒否されたとしても、返金の義務はありません。この事例では「転売は禁止されていない」と売主が嘘をついていたなどの事情がない限りは、詐欺にはあたりません。

弁護士に相談してもよいですが、費用を取り返すのは簡単ではなく、費用倒れになる可能性もあります。慎重な取引を心がけ、自衛することがなによりも大切です。

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