チケット転売が「不正」とされる3つの要素
チケット不正転売禁止法において、不正転売とは、「①興行主の事前の同意を得ていない、②業として行う有償譲渡であって、③元の販売価格を超える価格にしているもの」と定義されています。不正転売として禁じられているのはこれらすべてを満たす転売のみですから、「どうしても行けなくなったので譲ります」というような転売や、元の価格以下の価格での転売、無償譲渡は問題なく可能です。
また、不正転売以外に禁止されているのは、「不正転売を目的として」チケットを譲り受けることのみです。自分が楽しむ目的であれば、高額で不正転売されているチケットを、不正転売されていることを知ったうえで購入しても、少なくともチケット転売禁止法違反にはならないことになります。
「業として」とは、「反復継続の意思をもって」転売を行うことを指します。これは転売を生業にしている事業者に限りません。個人であっても、たとえば、チケットの座席指定ができない公演で、希望する位置の座席を確保する目的でチケットを大量購入したうえで、自分が使うチケット以外のチケットを転売する場合は、商売を目的にしているわけではありませんが、同様の行為を繰り返し行っていて、転売による収益を得ていれば、転売を反復継続の意思をもって行っている、つまり「業として」行っているものと判断される可能性があります。
チケットの転売だけが法律で規制される理由
不正転売をしたり、不正転売を目的にチケットを入手した場合、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金またはその両方が科されます。2020年には6件が検挙されています。
検挙された例を見ると、2020年に横浜DeNAベイスターズのチケットを転売した事件では、フリマサイトを通じて計95枚が転売され、その売上は100万円以上にのぼりました。また、2019年の嵐のチケット転売事件では、10公演、17人分のチケットが元の価格の約8~15倍の値段で転売されています。
この法律は、高額な転売によってチケットの適正な流通が妨げられることを阻止し、文化やスポーツの振興、消費生活の安定に寄与するという目的で定められました。なぜチケットなのかというと、たとえばライブでは、会場ごとに決まった座席数しか用意できませんから、チケットを販売できるキャパシティーは限られています。他方、商品の場合、供給する側が供給量を増やすことも可能です。このような意味で、チケットについては転売を規制する必要性が大きいと言えます。