自分が死んだら、パソコンやスマホはどうなるのか。弁護士の小林航太さんは「遺産として相続の対象になる。家族に中身を見られたくない場合は、信頼できる人と『死後事務委任契約』を結んでおいたほうがいい」という――。(第5回)

※本稿は、小林航太『オタク六法』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

●民法 第960条(遺言の方式)
1 遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。

遺言には3種類存在する

「死ぬ前にあのデータだけは消しておかないと」「部屋に隠したアレをそのままにしておいては、死んでも死にきれない」と考えるオタクもいるでしょう。万が一に備えて、恥ずかしい同人誌やグッズ、データの処分について指定しておくことはできるのでしょうか。

遺言書と書かれた封筒
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遺言では、亡くなったときの財産を、どういうふうに処分し、分けてほしいかを定めておくことができます。法的に有効な遺言を書けるのは15歳からです。遺言には自筆証書、公正証書、または秘密証書の3種類があります。

自筆証書遺言

自筆証書遺言は、文字どおり、遺言者自らの直筆で作成された遺言です。内容全文を自分で書く必要があり、日付と署名、捺印も欠かせません。要件を満たしてさえいれば、語尾が「ぴょん」になっていてもかまいません。

なお、財産目録については、印刷したものでもかまいません。この場合、目録の各ページに署名捺印が必要です。

公正証書遺言

公正証書遺言は、公証役場で、公証人という特別な資格を持っている人に依頼して作成してもらうものです。その際は2人の証人が立ち会う必要があります。作成した公正証書遺言の原本は公証役場で保管されます。

遺言書の保管

通常は、遺言を残していることを相続人に伝えておく場合が多いですが、誰にも遺言の存在を伝えておらず、自宅のどこかにこっそりと自筆証書遺言を保管していた……などという場合には、相続人に遺言書を見つけてもらえないということも起こります。

公正証書遺言に関しては、遺言者が亡くなった後であれば、相続人は公証役場(遺言書を作成した公証役場でなくてもかまいません)において遺言書の有無を照会することができ、遺言書の写しを取得することもできます。自筆証書遺言に関しては近年、法務局に管理・保管をお願いできる遺言書保管制度が創設されました。