画像自動生成AIの使用にはどんな法的リスクがあるのか。弁護士の小林航太さんは「たとえば実在する人物の卑猥な画像を生成した場合、名誉毀損罪に問われる恐れがある。使用者のモラルが問われていることを認識するべきだろう」という――。(第7回)

※本稿は、小林航太『オタク六法』(KADOKAWA)の一部を加筆・再編集したものです。

コスプレしている女性
写真=iStock.com/DKsamco
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●著作権法 第30条の4
著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想または感情を自ら享受しまたは他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種類および用途ならびに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
②情報解析の用に供する場合

他人のイラストを勝手にAIに学習させてもいいのか

昨今、画像を自動生成できるAIサービスが大きな注目を集めています。AIと著作権との関係にはさまざまな深い論点がありますが、そのうちのいくつかについて簡単に触れてみたいと思います。

まず、AIの開発などのために、AIにイラストを読み込ませて学習させることは、著作権法第30条の4第2号にいう「情報解析」(著作物から、構成要素になっている言語、音、影像といった情報を抽出して、比較、分類等の解析を行うこと)のために著作物を用いる場合として、著作権者の許諾なく著作物を利用できる例外にあたります。

そのため、著作権者の許諾なくイラストをAIに読み込ませても、著作権侵害にはなりません。もっとも、これは日本の著作権法の規定ですから、日本の著作権法が適用される場合(=利用行為が日本国内で行われる場合)に限られます。

なお、著作権法第30条の4のただし書では、「著作権者の利益が不当に害されることとなる場合」には著作物の利用が認められない旨が規定されています。このただし書は、技術の進展等によって、現在想定されないような新たな利用態様が現れる可能性があることなどを踏まえて規定されたものであり、ただし書の場合にあたるケースは限定的であると考えられます。