ロッカー式の納骨堂を運営する札幌の宗教法人が破綻した。都市部ではこの10年で大型納骨堂が次々にできている。ジャーナリストで僧侶の鵜飼秀徳さんは「納骨堂の実質の経営は宗教法人から名義を借りた大手の葬儀社・仏具販売など。東京では巨大ビル型納骨堂も多数でき、外資系金融業も経営に参画している。破綻したり競売にかけられたりすれば、遺骨回収ができなくなる恐れもある」と警鐘を鳴らす――。

都市部に続々できている「納骨堂」ビジネスの危うさ

北海道札幌市の宗教法人が運営する納骨堂が経営破綻し、混乱が続いている。

これまで「墓」や「納骨堂」の経営は、永続性が担保できる宗教法人に認可されてきた。しかし、実際には宗教法人ですら破綻することがありうることを証明した形となった。

多死社会や「墓じまいブーム」をにらんで、都市部ではこの10年ほどで大型納骨堂の建立が相次いでいる。だが、早くも経営が行き詰まってきているところがでてきている。納骨堂が閉鎖されれば、支払った利用料金が戻ってこなくなるだけでなく、最悪は遺骨を回収できなくなることが想定される。都市型巨大納骨堂というリスクを解説する。

経営破綻したのは、札幌駅からほど近い元町(東区)にある室内型納骨堂「御霊堂元町」。運営主体は「宗教法人白鳳寺」だ。同法人によれば「赤字経営を続けた結果、資金不足に陥っていた」という。2021年11月には借金の返済ができなくなり、納骨堂が競売にかけられ、不動産会社が落札した。差し押さえの後も、白鳳寺の代表は納骨堂を売り続けていたという。それが事実であれば、詐欺まがいの行為であり、許されることではない。

このニュースが10月下旬に報じられると、利用者は永代供養料などの返金や遺骨の返還を求めて押し寄せる騒ぎになった。現在でも、混乱は収まっておらず、不動産会社側は引き渡し期限を1カ月延長。11月21日までに、明け渡しを求めている。しかし、それまでに、すべての遺骨の返還はできるはずもない。海外や遠方に居住する人や、施設に入居している人は取りに行くことはできないし、送り届けられても困惑するだけだ。

こういうことは言いたくはないが、なかには「わざと」遺骨を取りにいかない人もいるはずだ。墓地埋葬法上は遺骨を受け取れば、自宅に安置するか、改めて墓地や納骨堂を契約するしかない。新たに数10万円から100万円以上のコストが生じることになる。海洋散骨する場合も、結局はコストがかかる。

同納骨堂は2012年に開業した。いわゆる「ロッカー式納骨堂」といわれているタイプのものだ。室内にコインロッカーのように扉のついた納骨壇があり、そこに骨壷を収める形態だ。

同納骨堂の最低価格はおよそ30cm角の、シンプルな個人用で30万円+年間管理費6000円。遺骨4柱まで入れて、仏壇のようなしつらいのタイプは70万~+年間管理費1万2000円。最も高額は9柱まで入れることができるものは250万円+年間管理費1万2000円となっている。

開業10年で1500基の販売数にたいして、773基(販売率52%)が売れていた。納骨堂内には北海道内外からの遺骨が1000柱ほど入っているという。

同納骨堂では、6億8000万円の売り上げがあり、年間800万円近くの管理費収入があったという。さらに契約数に伴って、葬儀や法事の布施などが入ってきていたことになる。773軒の檀家から想定される布施の年額は1000万円以上とみられる。

しかし、この宗教法人代表が釈明するには「開業してずっと赤字だった」という。納骨堂の元の建物は専門学校を利用して、納骨堂にしている。建物の改修費や納骨壇の設置費用などの初期投資はあったにせよ、一から土地を取得して納骨堂のビルを新築したわけではない。納骨堂経営が赤字であったというのは、どういう収支であったのか、役員報酬などを含めて、きちんと開示すべきだ。