旧統一教会問題が注目されているが、日本人=無宗教?
故安倍晋三元首相が銃弾に倒れて以降、旧統一教会問題がクローズアップされている。だが、これまでメディアではしばしば、「日本人の多くは無宗教であり、宗教離れが顕著」といった文脈で語られることが少なくなかった。また、自分は「無宗教」「無神論者」であると自認する人も多い。しかし、「日本人=無宗教」は本当なのか。本稿では日本人の、宗教との関わりをひもといていきたい。
日本人の宗教性はしばしば、欧米のキリスト教との比較において論じられる。米調査会社ピューリサーチセンターは米国人のうちキリスト教徒は約64%で、ユダヤ教やイスラム教、仏教などのキリスト教以外の信者が約6%、無宗教者は約30%と報告している。
しかし今後、米国のキリスト教徒は急激な減少に見舞われる見通しだ。2070年までに無宗教者の割合が全人口のうち34〜54%に拡大するとみられる。
その背景のひとつに、信仰の切り替え(宗教アイデンティティーの転換)がある。米国では現在、キリスト教信者の家庭に生まれた子どものうち、約31%が15〜29歳までの間に無宗教者に転じているとされている。
背景として米国では、近年「イエの宗教」から「個の宗教」への転換が急激に進んでいる。つまり、祖父母や両親が熱心なキリスト教信者だからといって、自分も教会に通うとは限らないのだ。
しかも、現代はネット社会だ。ネットを通じて、自分好みの「教え」や「宗教者」に自由にアクセスできる。例えば、マインドフルネスなどを入り口にして、ユーチューブなどの動画を見ながら、「ZEN(禅)」を実践する。とはいっても、特定の宗教団体に所属することはないのだ。
では、日本はどうか。NHK放送文化研究所が参加している国際比較調査グループISSPは2019年、日本人の宗教意識についての調査を発表している。それによると、日本人全体のうち「宗教を信仰している」割合は全体の36%に過ぎなかった。これは米国の半分に近い水準である。
宗教を信仰している人の割合は、前回調査の2008年時点の38%より2ポイント下げている。この割合を見ると、確かに、日本人は無宗教だといえるかもしれない。ちなみに宗教を信じる人のうち「仏教」と回答した割合が31%、神道が3%、キリスト教が1%となっている。