「予測」の強さによって知覚は変化している

これは脳に特有の情報処理様式であるといわれている。昨今流行りの人工知能を支えている深層学習のアルゴリズムであるニューラルネットワークというしくみでは、ボトムアップ的に何千、何万という画像(感覚入力)を学習して、計算結果(知覚)を出す。

AI (人工知能) の概念
写真=iStock.com/metamorworks
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一方、脳は経験からスキーマ(知識や経験の枠組み)を既に構築しているので、少ない入力から予測して即座に答えを出すことができる。したがって、ノイズまみれの情報から必要な情報だけをピックアップできるのだ。

つまり、予測が知覚を変化させるといっても差し支えないと思う。プラセボ効果は、おそらくこの予測に変化を与えるものだ。むしろ、ふだん痛みを感じている際に、恐怖や不安から過剰な予測があり、実際以上に痛みを感じているのだとも予想される。

脳に関する研究では「ストレスの感じ方が個人で異なる」ことが知られている。感覚入力に対する感受性が個人で異なるのはもちろん感覚受容器の感度もあるかもしれないが、予測の強さによっても変化するのではないだろうか。

プラセボがあることで必要以上に恐れる気持ちがなくなり、トップダウンの注意が分散したことで、痛みが軽減した、または本来感じるべき痛みの程度まで戻ったと言うこともできるかもしれない(本来感じるべき痛みというのは、実際よくわからないものではあるが)。

「自分が活躍できる場所」を複数持つことが大切

同様に、ストレスに対する感じ方も注意を分散させることで軽減される可能性がある。すごく簡単な例を挙げれば、自分が活躍できる場所を複数持つということが注意の分散になるかもしれない。

学校や部活、職場や家庭だけが自分の居場所だと、どうしてもそこでの環境にとらわれてしまうが、他にもサークルや異分野交流、なんなら外国人のコミュニティなどにも自分の居場所を作れば、学校や職場で受けるストレスに対する注意は分散されるのではないだろうか。これはぜひ実践してみてほしい。