プーチンの次に主導権を握るのはだれか
【橋爪】まず、プーチンの政権の今後なんだけれど、プーチンが政権の座にとどまる期間はもうそんなに長くないと思う。ひとつは健康問題。もうひとつは戦争の敗北に対する責任なんだけれども、誰かに押しつけることは無理なので、どう考えてもプーチンが悪かったことにするのがいちばんわかりやすい。政変があるか、失脚するか、平穏に交代するか、いずれにせよ、政権の座にとどまれなくなる。
その場合、主導権を握るのは情報機関なり秘密警察なり、内務官僚系の組織です。内務官僚系の組織を握って、プーチンは政権を維持してきた。民主主義が機能しない場合、巨大な官僚機構を集権的に運営する決め手は、軍でないとすれば、秘密警察。ロシアの伝統では、軍よりも秘密警察なんです。だから、プーチンが退場したとしても、秘密警察の権力は続くと思う。プーチンとよく似た権力が形成されるはず。そして、似たようなことが続くはず。
【大澤】なるほど。
ロシアの野望と政治力をくじく道
【橋爪】さて次に、ロシアそれ自体をどうするか、という問題。
ロシアは経済がガタガタで、大国への道のりは遠ざかるばかり。ヨーロッパからも総スカンにされていて、秘密警察に支持される専制的な権力が、巨大な核兵器を持っている。これは、ヨーロッパにとってもアメリカにとっても、世界にとっても大変に問題なわけだから、これをなんとかしたい。これは、ウクライナ戦争で見たように、軍事技術のイノベーションによって克服するしかない。
ロシアの大陸間弾道弾、戦略核兵器が無力化されればいいんです。無力化する方法は、高エネルギーのレーザー光線であれ、超音速の迎撃ミサイルであれ、どんな方法でもいいんだけれども、新しい時代の宇宙空間兵器みたいなものを開発する。10年かかるか、20年かかるか。それを開発して、アメリカを核攻撃する能力を奪ってしまう。これが、ロシアの野望と政治力をくじく道です。