なぜ中国は世界第2位の経済大国になれたのか。社会学者の橋爪大三郎さんは「資本から軍事、人事までを握る中国共産党の存在が大きい。この統治力と、向上心の強い国民性が結びつくと、さらに成長する可能性がある」という。大澤真幸さんとの対談をまとめた『おどろきのウクライナ』(集英社新書)より、一部を紹介する――。
中国の軍隊
写真=iStock.com/hanhanpeggy
※写真はイメージです

先進国の技術と資本をちゃっかり拝借

【橋爪】中国の経済発展はジェネリック医薬品(後発医薬品)に例えて考えるとわかりやすいです。

先発メーカーがあって、経営が苦しいんです。研究開発にすごくお金がかかる。いろんな医薬品の候補をつくるんだけど、なかなかものにならない。たまにうまくいっても、研究開発費を回収しようと思うから、薬価が高い。この値段でわが社の薬品を買わないと、ほかに売ってませんよ。これで治りますよ、みたいな商売で数年間は売って売って売りまくる。

消費者は、いい薬だけど高いな、と思うわけですよ。すると、ジェネリック医薬品が出てくる。先発メーカーの医薬品のコピー商品です。だいたい同じ薬効がある。それを生産すればいい。開発費がかからないから、安く売っても利潤が出る。後発のジェネリックメーカーは経営が順調で、先発メーカーを圧迫する。これが、中国が繁栄しているメカニズムです。

デカップリングは「中国の終わり」のはじまり

中国の繁栄のメカニズム。先発メーカーの技術、資本をちゃっかり拝借できる。それから製品を先発メーカーと競合する市場で売りまくる。このふたつが、中国経済の繁栄の基本です。逆に言うと、国際市場から切り離されて、資本技術が入ってこない、そして、製品も輸出できないとなれば、中国の発展モデルは終わりです。

【大澤】なるほど。

【橋爪】発展モデルが終わりでも、中国は国内市場がすごく大きい。だから、息の根は止まらない。中国経済として自律的に発展していけると思うけど、その場合の中国の発展と、中国抜きのグローバル世界の経済の発展と、どちらが調子がいいか。中国は世界の五分の一にすぎないから、中国抜きの世界経済のほうが分がいいような気がする。

だから、デカップリングという選択肢がもしあって、仮にそれが理想的に成功して中国の封じ込めが起こると、中国はそんなに調子が良くなくなると思う。20年、30年経ったら、いま中国が持っている利点は、たぶんなくなる。

【大澤】なるほど。