核兵器による被害のほとんどは爆風によるもの
10月4日、北朝鮮が発射した弾道ミサイル1発が日本上空を飛翔し、緊急情報がJアラートを通じて発信されたことは記憶に新しい。そして、今回もネットでまた見ることになったのが、Jアラートを無価値とする批判的意見や、過去の訓練などでもあった「こんな訓練は核兵器には無駄だ」という声だ。
正直、批判者や批判への反論者の間で、アラートの発令や訓練のたびに繰り返されるこれらの話題は、不毛としか思えないので関わりたくないのが本音だが、とりあえず核兵器と被害をもたらすその作用について端的に書いておくべきだろうと考え、本稿を残すことにした。
では、実際にJアラートでミサイル発射が通知された場合、国はアラートが出た地域の住民にどうしろと言っているのだろうか。内閣官房の国民保護ポータルサイトでは、次のように告知している。
メッセージが流れたら、
・建物がない場合:物陰に身を隠すか、地面に伏せて頭部を守る。
・屋内にいる場合:窓から離れるか、窓のない部屋に移動する。
この方針に基づく避難を行っている国民保護訓練の報道の中で、何もない田畑でしゃがむ人の映像が出てくることがある。それを見たネットではこういう声がよくある。「ミサイルや核兵器に対してこんなことをしても無駄だ」と。
これは核兵器の強力なイメージが生み出すものだろう。炸裂の瞬間、周囲を焼き尽くす閃光に爆風、そして体を蝕む放射線。そんな強力な核兵器に対して、屋外でただ伏せて頭部を守っているだけで効果はあるのかという疑問は、ある意味で当然といえる。そして、その疑問は正しい。ただし、一部だけ。われわれがイメージしがちな核兵器の威力というのは、核兵器の実相の一部でしかないのだ。
そこで、まず核兵器の威力とその被害について、被害をもたらす要素別に紹介しよう。
核兵器が炸裂した瞬間に何が起こるだろうか。そのエネルギーの50%は爆風、35%は熱、15%は放射線として放出される。最初に発生した火球が放出する熱線によって人体がダメージを受け、その後に爆発によって生じた衝撃波が人や建物を破壊し、そして最後に放射線の影響が出てくる(後述する初期放射線によるものもある)。
つまり、核爆発に伴うエネルギーの大部分は爆風となる。強力な圧力で人体にダメージを与えることもあれば、爆風で飛んできた破片等に当たってダメージを受けることもある。威力が桁違いであることを除けば、この作用は通常の爆発と変わりない。ただ、その範囲が広いのだ。