バラマキは形を変えた増税を引き起こす
一方で、政府の大盤振る舞いは後々国民へのツケとなって現われる。
財政赤字が膨らめば、いずれ増税などで国民負担が増える。財政赤字に加えて、防衛費の大幅な増額を政府は打ち出しており、国民負担が減る見込みはない。それでも消費増税は行わないというのが岸田首相の公約で、結局は国債の増発で膨らむ予算を賄う他なくなるだろう。
これまでは何とかそれでやりくりしてきた。だが、そのツケとして円安が進んでいる。財政悪化が進めば、その国の通貨の信用度は毀損していく。政府・日銀は介入で円安を止めようと必死だが、1ドル=150円に迫り、年初から30円以上も値下がりしている。さらに財政をバラマケば円安に歯止めがかからなくなるという声もある。
円安が進めば輸入物価が大きく上昇し、生活を圧迫するようになる。インフレが加速するわけだ。所得が増えない中で、物価が上がるというのは形を変えた「増税」である。旅行支援と言われても、旅行している余裕がない、という声はどんどん大きくなるだろう。
政府が介入すればするほど市場は歪む
問題は、「全国旅行支援」によって値上げができた旅館やホテルが、旅行支援が終わったからといって値段を下げるかどうかだ。
外国人観光客の需要があるところは値段を下げる必要がないし、国内旅行者しか泊まらないような宿は、値段を下げざるを得なくなる。しかし、コストは上昇しているから経営は苦しくなってしまう。
そうした業者は年内で終わる予定になっている全国旅行支援の継続を強く求めるだろう。結局、政府はバラマキを永遠に止められなくなってしまうわけだ。実際、すでに「全国旅行支援」の来年度以降の継続を検討するという報道がなされている。
需要と供給で価格が決まるのが資本主義だ。政府が補助金で価格を動かそうとしたり、需要を変動させようとすれば、それだけ市場機能は歪むことになる。結局は、その政策を止めた時の市場の反動が大きくなるわけだ。「全国旅行支援」にしても「イベントわくわく割」にしても、天下の愚策であることは間違いない。