補助金がなくても経済活動は自律的に回復する

だが、2匹目のどじょうは期待外れになるかもしれない。

というのも、2年前とは経済情勢が大きく違うからだ。新型コロナウイルスの感染者は増えたものの、死亡率は低下しており、多くの国民の警戒感が薄れている。結果、経済活動は自律的に回復傾向にある。

「イベントわくわく割」で東京ディズニーリゾートのパスポートを2割引にしなくても入場者は押し掛けるし、「全国旅行支援」で補助金を出さなくても秋の旅行シーズンの人出はかなり多くなると見込まれていた。

さらに政府が決断した外国人観光客の受入規制の実質的な撤廃によって、一気に外国人観光客が増える可能性がある。しかも、大幅な円安が進んでいるため、外国人の間での日本旅行ブームが起きそうな気配だ。放っておいても外国人観光客で観光地は満杯になる可能性があるわけだ。人気のディズニーリゾートにもやってくる外国人が急増するだろう。

そこで問題になるのが価格だ。

GoToトラベルの時にも一部の人気旅館で見られたが、補助金分、価格が上昇するケースがあった。今回は、「全国旅行支援」の補助金が帳消しになるくらい価格が上昇することになるだろう。さっそく、「旅行を予約しようと思ったが、値段が高くなっていて『全国旅行支援』のメリットを感じない」といった声が聞かれる。ディズニーのパスポートだってこれまでも値上げを繰り返し、来年度も繁忙期に値上げすると報じられている。

京都の旅館の窓から見える庭
写真=iStock.com/amaliacoyle
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物価上昇を抑え込むどころか許容させている

岸田文雄首相は10月末までに総合経済対策をまとめるよう指示を出し、物価高騰対策をさらに進めるとした。これまでもガソリン代の高騰を抑えるための補助金の支出や、輸入小麦の価格据え置きなどの政策を実施。さらに価格上昇が続いている電気代・ガス代の価格を抑制するためのこれまでにない政策を実施するとしている。価格上昇(インフレ)は何としても抑えたいというわけだ。

ところが皮肉なことに、「全国旅行支援」や「イベントわくわく割」は価格を抑える方向に機能せず、代金の引き上げを許容させるための補助金になりつつある。

それで旅行業者が儲けて、人件費の引き上げに向かえばまだしも、値上がりを続けている食材費や光熱費に消え、人件費引き上げには回らないという懸念もある。また、旅行代金が上がれば、当然、旅行自体を諦める人たちもおり、GoToトラベルほど旅行を活気付かせる効果があるのかも分からない。

外国人旅行者の増加で、観光業界はそれなりに潤うとしても、それが「全国旅行支援」や「イベントわくわく割」の経済効果だったという話にはなりそうにない。