大盤振る舞いのツケは国民自身に回ってくる
「イベントワクワク割」や「全国旅行支援」は本当に必要な政策なのだろうか。旅行代金を補助する「全国旅行支援」は、東京都を除く46都道府県では10月11日から、東京都は10月20日から始まる。旅行代金の最大40%、交通機関付きの旅行では8000円、その他では4000円が補助され、そのうえ、平日で3000円、休日で1000円の地域クーポンまで付いてくる。さらに、それとほぼ同時に入園料などを割引する「イベントワクワク割」も始まった。
2020年に実施されて人気を博した「GoToトラベル」「GoToイベント」の形を変えた施策である。政府の大盤振る舞いで、国民からすると「得をした」ように感じられる。だが、いずれそのツケは国民自身に回ってくる。
いったい何のため、誰のために行われている政策なのか。本当にその効果はあるのか。また、ツケはどんな形で回ってくるのだろうか。
冷え込んだ需要を喚起する役割は果たしたが…
もともとのGoToトラベルは2020年4月に外出自粛や営業自粛で一気に「人流」が止まったことを受け、新型コロナを抑え込んだ後の景気テコ入れ策として計画された。ピタリと客足が途絶えてホテルや旅館などの悲鳴が上がる中で、拙速だという声を押し切って7月に開始した。宿泊代金の50%を2万円まで補助し、その7割が旅行代金の割引、3割が地域共通クーポンという形で、今回の「全国旅行支援」よりも補助金額が大きかったこともあり、一気に旅行客が増える「効果」があった。
秋の京都など人気の観光地には旅行者が押し寄せ、旅館やホテル、土産物店など観光関連業者はほっとひと息ついた。だが、それとともに新型コロナの蔓延が拡大。「人流」を抑制することが蔓延阻止につながるとしてきたのだから「人流」を増やせば蔓延が拡大するのは当たり前と言えた。結果、年末になって「中断」に追い込まれた。
冷え込んだ需要を喚起する、エンジンのスターターとしての役割は証明されたものの、結局、再びブレーキをかけざるを得なくなった。今になって振り返れば、事業実施のタイミングが早すぎたということになる。
GoToトラベルの予算は当初、1兆4368億円が計上されていたが、途中で中断されたこともあり、7000億円余り使って7200億円を余らせた。GoToトラベル再開に向けた予算も確保しているが、今回はGoToトラベルを再開するのではなく、別枠の事業として実施している。