【CASE3】「昭和のオヤジ」が見放される時

「娘の高校受験が終わったら、『離婚してほしい』と切り出す予定です」

淡々と話すのは会社員のN子さん(45歳)。学生の時、バイト先で知り合った有名大卒の6歳年上の夫とは、今年で結婚生活23年目を迎える。

N子さん夫婦には独立したばかりの息子のほかに、現在中学生の娘がひとりいる。じつは、N子さんが離婚を真剣に考えたきっかけは娘がまだ小学生の時のことだった。

「私は高卒で結婚しました。出産後はじめて正社員として今の会社に就職したのですが、待遇やキャリアの重要性を思い知るようになり、『娘にはいい学校に行って、ちゃんと勉強をしてほしい』と思うようになりました。そのためにも、娘には私立の中学を受験させたかった」

夫にそのことを話すと「女の子は付き合う男次第で将来が変わる。だから、勉強するより見た目を磨いたほうがいいに決まっているだろ」と取り合ってもらえなかったという。

「もともと6歳年上でモラハラ傾向のある夫は、いわゆる『昭和のオヤジ』。これからは女性だって自分の夢を持ち、自立して生きていく時代だといくら説明しても、理解するどころか耳を貸そうともしない態度に腹が立つばかりでした」

それでも、あきらめきれなかったN子さんは大学までエスカレーター式で進学できる私立の女子校の中学受験を娘にさせたが、残念ながら“全落ち”して失敗に終わった。落胆している娘に向かって、夫はこう言い放ったという。

「オレの優秀遺伝子を受け継いでいれば絶対合格したのにな。残念ながらママに似ちゃったんだから、お前はもう勉強方面はあきらめるしかないな(笑)」

夫の言葉を隣で聞いていたN子さんは屈辱で涙をとめることができなかった。

「夫の言葉を信じたのか、その日以降、娘は私の言うことを聞かなくなりました。『ママの言う通りにしても、どうせうまくいかないから』と。それでも受験に失敗したのは悔しかったようで、今は自分で探してきた塾に通い、同じ女子校に高校から入学することを目指して猛勉強中です」

一方で、N子さんは日を追うごとに夫のことが嫌いでたまらなくなっているとのこと。

「娘の中学受験でハッキリしたのは、夫は私に対するリスペクトの気持ちはかけらも持っていないということ。もう、この人との未来は描けないと感じたので、娘が受験に合格したら私も新しいスタートを切ろうと思う。そのためにも今は離婚後の安定した生活を維持する目的で、密かに投資をして自分名義の貯蓄を増やしています」

別々の道を歩き出す夫婦
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