いま、宇沢弘文の理念を実践できるか問われている

【永井】温暖化など今、地球は宇沢先生が憂いた問題に直面しています。環境のコストや炭素税の数値化など、具体的で精微な分析を読み解くのは、宇沢先生のように数式に通じていないと難しい。

それでも一人ひとりがそれぞれの分野でできることがある。今、宇沢先生の理念を実践できるか問われているような気がするんです。

認定NPO法人 本の学校顧問の永井伸和氏。
写真=中村 治
認定NPO法人 本の学校顧問の永井伸和氏。

【原田】我々、とりだい病院は社会的共通資本として何ができるか、ですね。

鳥取大学医学部附属病院広報誌『カニジル 11杯目』
鳥取大学医学部附属病院広報誌『カニジル 11杯目』

【永井】私事になりますが、私は要介護4の妻との老々介護の生活を送っています。とりだい病院パンフレットの『トリシル』の中に看護師さんが原田病院長からこれから病院は積極的に街に出て行くように言われたという記事がありました。

【原田】「医療福祉支援センター」の木村公恵師長の〈大学病院と行政、地域の医療施設の「真の連携」を求めて〉ですね。

【永井】はい。とりだい病院には、高度医療はもちろんですが、地域全体を支える医療機関としての機能を期待しています。

【原田】ありがとうございます。今後ともご意見を宜しくお願いします。

宇沢 弘文(うざわ・ひろふみ)
経済学者。1928年、米子市法勝寺町に生まれ、家族で東京に引っ越す3歳までを米子で過ごす。1951年東京大学理学部数学科卒業。河上肇著『貧乏物語』に影響を受けて経済学へ転向。アメリカの経済学者ケネス・アローの招きでスタンフォード大学の研究員となった後、助教授へ就任。35歳の若さでシカゴ大学教授となる。その後、東京大学経済学部教授、同学部長、新潟大学教授、中央大学教授などを歴任。1997年、文化勲章受章、米子市「市民栄光賞」を受賞。2014年9月18日に亡くなるまで、真に豊かに生きることができる条件を、生涯をかけて具体的に探求し続けた。主な著書に『自動車の社会的費用』『「成田」とは何か』『地球温暖化を考える』『日本の教育を考える』『社会的共通資本』など。
永井 伸和(ながい・のぶかず)
認定NPO法人 本の学校顧問
鳥取県米子市生まれ。認定NPO法人本の学校顧問、ブックインとっとり地方出版文化功労賞実行委員会顧問、「よなご宇沢会」会員、元今井書店グループ役員(本年創業150年)。都立戸山高校卒業。早稲田大学教育学部入学・商学部1966年卒業。事業を継承し書籍小売、教科書供給、印刷出版の傍ら、児童文庫の輪を広げる「本の会」、読書推進と市町村図書館振興の活動に関わる。1991年サントリー地域文化賞。1994年日本図書館協会功労賞。1995年今井書店グループが本の学校設立。2009年、今井書店グループと本の学校が第57回菊池寛賞。2012年本の学校をNPO法人化。
原田 省(はらだ・たすく)
鳥取大学医学部附属病院長
1958年兵庫県出身。鳥取大学医学部卒業、同学部産科婦人科学教室入局。英国リーズ大学、大阪大学医学部第三内科留学。2008年産科婦人科教授。2012年副病院長。2017年鳥取大学副学長および医学部附属病院長に就任。患者さんと共につくるトップブランド病院を目指し、未来につながる医学の発展と医療人の育成に努めながら、患者さん、職員、そして地域に愛される病院づくりに積極的に取り組んでいる。好きな言葉は「置かれた場所で咲きなさい」
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