「勝ち組」の2つの大学が融合する
東京工業大学と東京医科歯科大学が統合協議を開始すると発表した。医科歯科大は医学部、東工大は情報理工学院という工学系学部が、それぞれ大手予備校による偏差値ランキングの最上位に並ぶエリート大学だ。そのいわば「勝ち組」の両大学が、医療系と理工系を融合することによって、さらに抜きんでた研究力の強化に取り組むという。狙いは「理系の東大」か。いずれにしても大学の勢力地図が大きく塗り替わることは間違いない。
東工大と医科歯科大は一橋大学、東京外語大学とともに「四大学連合」を組んでおり、かねてより統合が取り沙汰されてきた。その脈絡からみれば両大学の統合に違和感はない。しかし、「四大学連合」に至る道のりは平坦なものではなかった。
四大学連合の嚆矢は1990年代の終わりに、東工大、東京外国語大、一橋大の学長が集まり、連携を模索したことに始まる。競争力のある単科大学が集まれば面白い総合大学ができるというのが原点だ。そこに医科歯科大と東京芸術大学が加わって、1999年秋に5大学による連合構想が打ち上げられた。
しかし、構想が具体化するにつれ教授会の反対もあり芸大が離脱、東京外大もいったん、距離を置いたものの、その後復帰し、2001年に現在の「四大学連合」が誕生した経緯がある。
「打倒東大」の裏で生き残り合戦が始まった
その意味で、今回の東工大と医科歯科大の統合は大きな大学再編の序章に過ぎないともみられる。同時に、表向きは医学系と工学系を合わせて東大に立ち向かうという“下剋上”のようだが、その中身は生き残りをかけた大学ファンドの分配争奪戦という、泥臭い顔も有している。背景にあるのは少子化の進展と行政の圧力だ。
大学統合では、古くは2007年10月に大阪大学と大阪外国大学が統合し、新生・大阪大学が誕生。旧帝大で唯一、外国語学部を備えた大学となったことがあげられる。その後、2020年には名古屋大(名古屋市)と岐阜大(岐阜市)が統合し、「東海国立大学機構」が誕生したのは記憶に新しい。
この統合劇が起爆剤となって22年に入り、小樽商科大学、帯広畜産大学、北見工業大学の北海道の3大学が統合合意し「北海道国立大学機構」を立ち上げたほか、奈良教育大学と奈良女子大学が統合を決めた。
そもそも国立大学は、戦後、各都道府県に最低一つの総合大学が設置された。大学を運営するのは「国立大学法人」で、現行制度では一法人が一大学しか運営できない。しかし、少子化や財政難から、地方大学の中には単独で生き残ることが難しいとみられるところも少なくない。国からの交付金も減少し続けている。