もっとも、「テレビの力は落ちても、地方での影響力はむしろ大きくなる」という声も聞こえてくる。ローカル局には、地域情報や地域文化の担い手としての期待が根強くあるのだ。
とはいえ、物理的な境界がない「ネット時代」に、都道府県域にとらわれるローカル局の限界は明らかだけに、生き残るためには旧来の発想と意識の転換が求められる。
ネット配信が拡大しても課題は山積
民放界も、手をこまねいているばかりではない。
無料番組配信サービスTVerによるネット配信が拡大し、今春からは民放各局の常時同時配信も始まった。
だが、ネットの配信事業で、放送と同じように広告収入を得られるかどうかは未知数で、収益源として確信できるまでには時間がかかるとみられる。受信料に裏打ちされて財源の心配なくネット事業を展開するNHKのようにはいきそうにない。
21年版情報通信白書によると、さまざまなメディアの中で「信頼できるメディア」としてテレビを挙げた人は53.8%で、新聞の61.2%に次ぐ。フェイクニュースが横行するネットと違って「信頼できる情報源」としての評価を引き続き得ることが、デジタル時代の民放界に課せられた最大のテーマになる。
過去の成功体験が次代の足かせになってしまうケースは、いやほど見てきた。メディアで言えば、新聞の凋落はその最たるものだろう。民放界が同じテツを踏まないためにも、民放政策の歴史的転換のタイミングをベストチャンスと捉えることが求められる。