姉が精神安定剤を飲むように
姉は度重なる母からの呼び出しや暴言のせいで、精神的にかなり参っていた。
睡眠導入剤や精神安定剤を飲んだりもしていた。
しかしそのことは、当時一切僕には言わなかった。
自宅に戻ると家族の前で泣き崩れ、子どもたちに愚痴って心配をかけ、
「そんなにつらいなら、もうおばあちゃんの所に行くのはやめなよ。このままだと、ママがおかしくなっちゃうよ」
と言われていたという。
しかし、それでも姉は母のもとに通った。
ひどいことを言われてもなお、通い続けた。
それは一体なぜなのか。その胸の内を姉はこう語っていた。
「ひどいこと言われてもね、翌日呼び出されるとやっぱり心配になって、お母さんのとこに行っちゃうのよ。
『お母さんを頼む』ってお父さんからも言われたし、何よりあの時は豊も千賀子さんも忙しかったでしょ。私はもう子どもの手は離れてるし、手が空いているわけだから、暇な私がやればいいかなと思ったの。
それにね、お母さん、いつもひどいことを言うわけじゃないのよ。一緒にテレビを見て笑ったり、楽しく思い出話なんかができたりする日もあるの。
ひどいこと言われて、『お母さんなんか知らない!』『もう来てやるもんか!』って思う日もあったけど、昔のように明るく朗らかなお母さんでいる時もあったから、何を言われても頑張れたんじゃないかと思うのよね」