男性だけではなく、女性も含めた社会の問題として捉えるべき
男性の生きづらさをテーマに20年余り調査、研究していると、「男性の特権を棚上げして、代償だけを主張すべきではない」というご批判を受けることもありますが、私は男性の特権をなかったことにしようとしているわけではありません。ただ、女性が男性優位社会で苦しんできたのと同じように、男性もまた「男らしく」あるために長時間労働や私生活の犠牲を強いられ、ジェンダー規範からの逸脱に対する厳しい世間の目にさらされてきた被害者だと思っています。
OECDの幸福度白書などの国際調査の分析を続けていますが、複数の調査で世界的な傾向に反して、日本は男性の幸福度が女性よりも低いという結果が出ています。こうした調査からも分かるように、日本は女性だけでなく、男性も生きづらい社会であるといえます。男性の特権を問題視しながらも、その代償でもある旧来の「男らしさ」規範による生きづらさに目を向けることは可能です。
男性の生きづらさを和らげることは、女性の生きやすさにもつながります。ジェンダー平等の実現について多角的に考えていくためにも、ぜひ「男らしさ」の呪縛に苦悩する男性の問題について、女性も含めた社会全体の問題として捉えてみてほしいです。
(構成=佐々木ののか)