もちろん、ちゃんとその知識をわかっていて使うのであればなんの問題もありません。しかし大抵の場合、試験の直前に軽く読んだ本の受け売り程度で語っている場合が多いのではないでしょうか。

そういう姿勢で面談に臨む場合、多くの受験生は1つの重大な事実を忘れています。それは、相手はその道のプロであるということです。あなたが「これがわかっているのはかっこいい/自分を大きく見せられるはずだ」と思う知識は赤ん坊が大人と会話を試みるようなものでしかなく、相手は専門用語に対する感度も非常に高く、言葉の正しい使い方についての基準は常人の何十倍も高いのです。

その道のプロによく知らない専門用語を多用するとしっぺ返しをくらう

例えば、こんな話があります。自分には東大教育学部に推薦で合格した友達がいるのですが、プレゼンで「子供の自己肯定感を育めるような教育が必要だ」ということを軸にして、自分の高校時代の活動に立脚して語ったそうです。質問もある程度事前に想定していた通りのものが来て、うまくこなすことができたそうなのですが、後半に入ってからの東大教授からの予想外の質問に驚愕きょうがくしたのだとか。

「あなたはプレゼンの中で、『自己肯定感』という言葉を使っていましたが、あなたのその言葉の使い方と一般的に認知されている定義との間に、違う部分があるかもしれないと考えたことはありますか?」

20個以上質問を想定していた彼女でも、この質問は完全にノーマークだったそうです。

確かに言われてみると、「自信」という意味で「自己肯定感」という言葉を使う人もいれば、「前向き」という意味で使う人もいるでしょう。また、「期待」とか「信頼」とか「信用」とか、微妙に意味が異なっているけれど使い分けることが難しいさまざまなニュアンスがあったりもしますよね。

東大の教授のこの質問は、その部分を聞いたものだったわけです。彼女はこの質問に対して、自分の使っている言葉の意味と一般的な解釈で、共通な部分と異なっている部分を説明し、どう異なっていたのかを示し、合格することができたと言います。

みなさん、「自己肯定感」なんて普通の言葉ですら、教育学部の教授から見れば立派な専門用語であり、その言葉の使い方については一家言あるわけです。そんな人を相手にして、「アノミーが……」「シンギュラリティが……」とか語るのは、もはや自殺行為だと思いませんか?

足が地面から離れるほど自分を大きく見せてはいけない

ここで先ほどの話に戻りましょう。

嘘は、ばれます。

面接で嘘をつく男
写真=iStock.com/Orbon Alija
※写真はイメージです

虚飾で塗り固めて自分のことをコーティングしたところで、教授先生には通用しません。

もちろん、等身大の自分を見せろ、なんていう気はありません。背伸びしていいですし、みなさんが「今の言葉が一般的に認知されている言葉の定義と違う部分があるかもしれないとわかっていますか?」なんて聞かれたら「いいえ!」なんて答えず「私はこういう意図で使っていました」と伝えるべきです。

しかし、決して嘘にならないように話さなければなりません。背伸びをしてもいいけれど、足はちゃんと地面についている状態をキープするのです。足が地面から1ミリでも離れたらゲームオーバー、というゲームだと思って準備する必要があります。