履歴書には「失業中」ではなく「起業準備中」と書け
では、どんな道を歩んでいたのか。修業も積まずに起業し、親族や友人からカネを借りて創業資金にしたのだ。バブソン大学を訪問した際には講義で「創業資金はまず親族、次に友人から調達」という話を聞き、心の中で「そうだろう!」と叫んでいた。
日本では銀行が大きな役割を果たしている。実際、VCへの資金の出し手として銀行は最大勢力だ。しかし、銀行は元本保証の預金を資金源にしている点を忘れてはならない。高リスク・高リターン型のスタートアップ投資とは構造的に相いれない。
アメリカ訪問でもう一つ腑に落ちた点があった。児玉は4回も起業しているだけに、日本では履歴書に「失業中」と書かなければならない状況に何度も置かれた。ところが、バブソン大学では「失業中ではなく起業準備中と書け」と教えられたのだ。
「日本では会社に勤めていないと無職のレッテルを張られる。『半年間何をしていたの?』『遊んでいたの?』とか聞かれる。敗者ですよね」と彼は言う。「でも、起業を目指しているのなら堂々と『起業準備中』と宣言すればいい。こんなところから日本は変わっていくべきだと思います」
ラクサスの成長のカギを握る海外展開
ラクサスの会員数は40万人(有料会員2万人)を突破し、継続率は95%以上。売上高は毎年20%前後で増えている。流通総額で見れば年商1000億円だ(注:20万円のバッグを一つレンタルすれば20万円とカウントするのが流通総額)。今後もさらなる成長が続くのだろうか。
カギを握るのが海外展開だろう。ラクサスはすでにニューヨークに進出しており、ヨーロッパやアジア市場にも目を向けている。児玉は次のように語る。
「洋服だと世界展開が難しい。流行や文化の違いからアメリカとフィリピンではニーズが異なりますから。でも、ラグジュアリー(高級)バッグは世界中どこでも全部同じ。どこでも通用するという意味で、世界共通語の英語みたいなもの。だからポテンシャルは大きいと思っています」