理由その1…インバウンド需要と成田のおかげ

MCC就航開始の頃は訪日客増加がどれだけ国内産業に好影響をもたらすか知られていなかった。

LCC急成長の要因は、発足当初から国際化を推進してきたことも大きい。2012年からコロナ禍に入る2019年まで訪日外国人旅行者数が急増した。以前は日本人出国者の半分程度だったが、2015年には逆転した。日本政府の観光立国の方針が功を奏したと言える。

訪日客の急増は中国や韓国など近隣諸国からが顕著だ。韓国を例にとると、最盛期は6社もの韓国系LCCが日本に就航していた。これを黙って見ているわけにはいかないと戦略を国際線にも振り向けたのが日系LCCなのだ。

ピーチは、初就航から2カ月目に関西空港からソウルへ国際定期路線を開設し、コロナ禍前には17路線まで増やしていた。ジェットスターは、就航開始3年後に関西から香港への国際定期路線を開設し、7路線まで増やしていた。

今後はコロナ禍の落ち着きを見据えて国際線の再開で、インバウンドの需要が上がり、経営を支えていくことになる。ピーチで売上比率4割、ジェットスターで同2割の国際線事業が復活する。

ピーチは2022年8月28日から関西⇔ソウル線で国際線が再スタートすることを発表済みだ。ジェットスターグループのジェットスター航空は、2022年7月21日から成田からオーストラリアのケアンズ向け定期便を再開させた。

成田空港に就航するジェットスター機
筆者撮影
成田空港に就航するジェットスター機

少子高齢化で国内需要の拡大を期待することはできないことからインバウンドを獲得し、拡大路線を取ることが必要だ。コロナ禍で国内線を充実させていたLCCは国際線のインバウンド旅客を国内線で乗り継ぎさせる儲けの良い循環が出来上がっている。その一例が、次に述べる国内の路線開拓だ。

理由その2…常識外れの新規路線を次々創設

「LCCの常識」と言われる基本的なビジネスモデルは、利用者のいるところに飛ばすことだ。大手エアラインで言えば国内幹線となる。国内幹線とは、政府統計の指針で羽田と成田から新千歳、大阪、関西、福岡、那覇を結んだ旅客数が圧倒的に多い路線のことを言う。

LCCは低賃金・高頻度で輸送し、収益化を目指す。このセオリーをMCC4社に当てはめてみると、国内幹線を複数路線運航しているのはスカイマークのみだ。同社は神戸の8路線についで、6路線を羽田空港から就航させており、うち3路線は幹線だ。他3社は、自社の拠点となる空港と羽田を結べても、幹線には就航せず、旅客を積み増すことはできなかった。