日本で格安航空会社(LCC)が飛ぶようになって10年がたった。LCCの登場で「空の旅」はグッと身近なものになった。航空ジャーナリストの北島幸司さんは「LCCの普及の理由は『安さ』だけではない。スカイマークなどのMCCが乗り越えられなかった『羽田空港の神話』を打ち破ったことが大きい」という――。
日本のLCCが10年で急成長できたワケ
LCCと呼ばれる格安航空会社が、日本の空を飛ぶようになってから10年がたった。大手エアラインでの空の旅は、出張でこそ利用したが私用でのレジャーに使うには高過ぎる運賃だった。LCCは空と私たちの距離を一気に縮め、身近なものにしてくれた。
日本は長年「LCCの空白地帯」だったが、2012年に国産LCCのPeach Aviation(以下、ピーチと表記)、ジェットスター
それはエアラインの規模を示す有償旅客キロ(RPK)を見れば明らかだ。
コロナ前のRPKを比べると、2019年度はLCC3社(スプリングを含む)で計144億RPK。これは後述するMCC(Middle Cost Career)と同規模だ。コロナ禍となった2020年度も両者の輸送規模はほぼ互角と言える。
MCC4社は1990年代後半に誕生した。LCCの倍となる期間を営業しているわけだが、誕生10年でLCC3社はMCC程度まで急成長を遂げたことが分かる。
本稿ではLCCの過去を振り返り、今後を展望したい。なぜ日本のLCCは欧米に大きく遅れてスタートすることになったのか。そして急成長はなぜ実現したのか。これらをMCCとの比較と「羽田神話」の2つの視点から読み解きたい。
規制緩和とMCCの挫折
LCCを生み出したのは航空規制の緩和に他ならない。低運賃を掲げるLCCは1978年の米・航空規制緩和法の成立で航空業界に新規参入が可能になったことが発端だ。その波が、欧州、アジア、豪州、そして日本にも波及する。