ロシア国民はクリミア併合の時ほど歓迎していない

ロシア国内はどうかと言えば、2014年のクリミア併合の時ほど、国民は歓迎していません。あのときは、欧米にやられっぱなしだったロシアの逆転の象徴だと受け止められていました。

しかし、国際的な経済制裁を受けて、国民の生活は厳しくなりました。プーチン大統領の1期目と2期目である2000~2008年までは経済成長率は平均で年6.97%、リーマンショックにより2009年の経済成長は落ち込むも、2010~2013年までは3.84%ほどあった経済成長率は、クリミア制裁後の2014年から2021年では平均で0.92%まで落ちました。

今回も、国際的な銀行間の決済システム(SWIFT)からロシアの複数の銀行を排除するなどの制裁を受け、ロシアの通貨ルーブルが暴落しています。ロシア経済は再び、かなりの血を流すことになります。

しかしロシア人は、ソ連が崩壊した80年代終わりから90年代にかけて、非常に厳しい耐乏生活を経験しています。92年のインフレ率は、実に2500%です。石けんや砂糖や塩やマッチが手に入らない時代が、わずか三十数年前でした。あの頃に比べたらマシだと、多くのロシア人は感じているはずです。

経済制裁の影響はこれから出てきますが、ロシアという国が潰れるほどにはなりません。したがって、プーチン大統領の支持率が大きく下がることは考えにくいでしょう。他方、政治的エリートや体制派の知識人以外の民衆はこの戦争を積極的には支持していません。

(構成=石井謙一郎)
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