居眠りは世界の士官学校の共通課題
防大生は朝から晩までスケジュールがびっしりと詰まっていて忙しく、頭も使うが、体もかなり使う。ということで、実は疲れて教場で授業中に居眠りする学生もいる。これは世界の士官学校の共通の課題のようだ。
教場の先生たちも、寝かさないように授業の工夫をしてくれているが、皆が朝から動きっぱなしで疲れているのがわかるので、放任してしまうケースも多いという。
そこでこれをどうにか改善できないかと指導陣で議論を重ねたこともある。居眠り学生を見つけたときにはどうするか。周りの学生が気付いたら起こす。もしくは、眠くなったら自主的に起立して授業を受けるようにする、など。
防大では休み時間に椅子に座って机で眠ることは可だが、ベッドでの昼寝は許されてこなかった。短時間の昼寝を入れたらどうかとの案も検討されたが、結局は否決された。が、どうも2021年からは「パワーナップ」という号令で、ベッドでの昼寝も試行されているようで、効果を上げていると聞く。いろいろ試行錯誤することは非常に良いことだ。
“北緯38度線”上級生不在の空間に安心し眠くなる
もう一つ、携帯・スマホだが、教場に持ち込むことを禁止してはいないが(一部の授業では電子辞書代わりに携帯を使用させることもある)、教務班の学生たちが自主的に教場の前で回収していることも多い。こんなことを一般大学で実践したらどういうことになるのだろうか、と思う。ただ、最近はオンライン授業も行われているので、授業に活用することもあるのだろう。
学生舎と教場の境目の道路を、学生たちは「北緯38度線」と呼ぶ。学生舎では絶えず上級生の厳しい目があり、気が抜けない。特に1学年のときはそうだ。ところが教場に行くと、そこに「敵」はもういない。となると、気が緩んで居眠りに、などとなるのも就寝率の高さの原因の一つらしい。
そういえば、1学年での留年だけは絶対に避けたい。もう一度1学年の「地獄」の生活を送りたくないということのようだ。ある学生の証言によると、防大生が「人権」を獲得するのは2学年のカッター競技会が終わってからだそうだ。