防衛大学校ではどんな訓練が行われているのか。元防衛大学校長の國分良成さんは「防大の学生には4年間で1005時間の実践訓練が課されている。特に1学年の夏の『遠泳訓練』では約6時間、8キロを泳ぐことになる」という――。

※本稿は、國分良成『防衛大学校 知られざる学び舎の実像』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。

新装の各自衛隊制服姿での宣誓式
新装の各自衛隊制服姿での宣誓式(写真=『防衛大学校 知られざる学び舎の実像』より)

圧倒的な第1志望はパイロット

学科教育と訓練のどちらを優先すべきか、それは世界の各士官学校によって基準が異なる。半々にしているところもあれば、米国の士官学校などでは基本的に学科教育を優先している。

防大では具体的な比率を決めていないが、基本的には学科教育を上位に置いている。しかし訓練に関しても、士官学校である以上、教場での教育に劣らず重視されている。

学生が訓練関係で最も気になるのは、1学年の最後に決まる陸・海・空の要員配分である。ここで配分が決まると、それが一生の仕事となる。防大生の一種の就活だ。現状では陸・海・空の配分比率は2対1対1、1学年定員の480人をその割合で分けた数となる。世界のほとんどの士官学校は陸・海・空に分かれているので、入校の時点ですでに要員の割り振りは決まっているが、防大やオーストラリア、カナダのような統合士官学校だと、入学後に配分されることになる。

学生の第1志望が多いのは依然としてパイロット、なので航空要員志望が多い。しかし、実際のところは陸上にも回転翼のヘリコプター・パイロット(ヘリ・パイ)の道があるし、海上にもヘリ・パイと固定翼の哨戒機のパイロットへの道がある。パイロット適性(P適)については、身体や心理など初歩的な検査が学生時代に行われる。それから外れてしまい、卒業時に任官辞退などというケースもあるが、防大はパイロット養成所ではないので、それで辞めるようであれば幹部自衛官としてどうなのか、との思いもある。

文明の利器で海自の人気は復活傾向

いったん勤務で海上に出るとしばらく陸との連絡が途絶えてしまい、接するのは船上の隊員のみ、携帯も使えない。こうしたことからか、しばらく海上の人気が落ちていたが、今では衛星を使って携帯も使えるようになってきており、もちろんそれだけが理由ではないが、最近では人気が復活している。

陸上は人数が海・空の倍なので、どうしてもそれらに比べ志望が定員に対して少なくなるが、海と空がメカの世界になっているので、人間同士の触れ合いという点では陸上が一番である。

さて、訓練の前にまずは体力である。そこで防大生には全員に定期的に体力測定が課される。種目としては、50メートル走、1500メートル走(男子)、1000メートル走(女子)、立ち幅跳び、ソフトボール投げ(男女によって球の大きさが異なる)、懸垂腕屈伸(男子)、斜懸垂腕屈伸(女子)がある。懸垂腕屈伸はいわゆる懸垂だが、女子の場合は鉄棒を使って斜めに腕立て伏せをする形である。