日本の海自がペルシャ湾に派遣された理由

3学年は硫黄島研修がある。激戦地の歴史を学び、慰霊する。学生たちは航空自衛隊の支援を受けて輸送機で硫黄島入りする。私も在任中3回ほどこの研修に同行した。

國分良成『防衛大学校 知られざる学び舎の実像』(中央公論新社)
國分良成『防衛大学校 知られざる学び舎の実像』(中央公論新社)

硫黄島には、別に古い機雷を爆破処分する「実機雷処分訓練」の視察で訪れたこともある。かなり離れた艦艇から視察したが、それでもこちらに振動が伝わってくるほどに機雷の衝撃は大きかった。

命懸けの作業だが、機雷を爆破する装置を取り付ける手当ては安いと聞いている。湾岸戦争後の1991年、海上自衛隊の掃海部隊がペルシャ湾に急遽派遣されたが、それはこうした地道な訓練を繰り返していたことが大きかった。

硫黄島は火山が海面に突き出た部分が島となっているようなところで、硫黄の臭いも激しいし、いたるところで噴煙があがっている。遺骨収集の終わらない硫黄島では、霊感の強くない人の枕元にも夜中に現れることが多いので、ペットボトルの蓋を開けて置いておくようになどの言い伝えがある。

私は鈍感なのだろうか、毎晩よく眠ることができた。現在の上皇上皇后両陛下が硫黄島に慰問に来られてから、こうした現象が激減したとも言われている。

実は、硫黄島で戦死したロスアンゼルス・オリンピックの馬術競技で金メダルを獲得した西竹一大佐(バロン西)は、血のつながりこそないが、私の遠い親戚にあたり(歳の離れた従兄の義父)、この研修は偉大な親族を慰霊する貴重な機会ともなった(写真)。

近影
バロン西の慰霊碑の前で(硫黄島)(写真=『防衛大学校 知られざる学び舎の実像』より)
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