「あの作品を見るまでは死ねない」

たとえば劇団四季では人気の演目が1年以上ロングランすることを考えると、宝塚の演目の回転の速さがちょっと異常であることが分かるのではないだろうか。

これに全国ツアーや小さい劇場での公演も追加で行われる。劇場まで行けなくとも、千秋楽公演はたいてい生配信を家で見られる。宝塚をいったん好きになると、「暇がない!」と嘆くことになる人も大量に存在するわけである。私もそのひとりで、気がつけば宙組の長崎公演のために地方遠征したり、ある雪組公演にドはまりして同じ舞台を複数回見たりしていた。宝塚にハマって圧倒的にアクティブになり、休日に外へ出かけるようになった。

ちなみに次に上演される作品のタイトルは、半年以上前から発表される。私は宝塚を好きになって、半年以上先に楽しみな演劇があるというのは、なんだかいいものだな、と思うようになった。「あの作品を見るまでは死ねない!」と思えるのは楽しい。

宝塚劇場
写真=iStock.com/winhorse
※写真はイメージです

常に新しくて面白い作品が演じられる

さらに宝塚歌劇団の特徴のひとつは、新しい作品を常に作り出していること。

作品は、基本的に座付き演出家が脚本を書き、自ら演出する。そのため、役者へのあて書きを施した宝塚オリジナル作品が存在する。

最近だと、音楽家のリストたちを描いた『巡礼の年〜リスト・フェレンツ、魂の彷徨〜』、前作から10年以上たってシリーズ3作目が描かれた『めぐり会いは再び next generation―真夜中の依頼人(ミッドナイト・ガールフレンド)―』があった。

あるいは海外ミュージカルを上演することもある。『エリザベート』『ガイズ&ドールズ』などは宝塚でも再演されることの多い人気演目となっている。

さらには漫画原作(たとえば『るろうに剣心』『CITY HUNTER』『はいからさんが通る』)まで、フィクションエンターテインメントとしての幅は限りなく広い。どれも華やかで美しい舞台セットや衣装で「宝塚らしさ」を持ち続けながら、人気演目をつねに生み出そうとしている。

ある時、昔から宝塚を好きな私の友人が、「本当に最近は駄作が少なくなった」としみじみ言っていた。フィクションとしての面白さも追究し続けていることが、今もなお劇団が人気である理由のひとつではないだろうか。