365日宝塚を流し続ける番組がある
私に『アナスタシア』のチケットを取り次いでくれた友人は「宝塚沼に入るスピード速すぎない⁉」と驚きつつ、宝塚は5組あって、そしてそれぞれトップ男役とトップ娘役という存在があって……とLINEで教えてくれた。
楽天で毎度配信を買うよりも、CS放送でまるまる1チャンネル、朝7時から深夜2時まで宝塚の過去作品や裏話トークを流している「スカイステージ」チャンネルに入ったら、録画もできるし半永久的にみられるしお得では⁉ と気づくのに時間はかからなかった。そして私は宝塚ファンとなった。
毎日が「仕事・睡眠・宝塚」のサイクルで完結した。過去作品を見始めると止まらなくて、仕事と睡眠時間以外はすべて見続けた。なんせ1公演3時間浴び続けるのを1日に数回繰り返すのだ。これまでみていたNetflixやhuluのドラマが目に入らなくなってしまった。宝塚の魔力、怖い。
宝塚といえば劇場でハマるものというイメージがあったけれど、私の場合は、SNSでタカラジェンヌについて友達と話したり、配信サービスやCS放送で楽しんだりすることでハマったのだった。宝塚は、誰かのファンクラブに入らなくてもまんまとハマる「沼」だったのだ。
フィクション×エンターテインメント=宝塚
いきなり宝塚以外の話になるけれど、私は、日本の今流行っているエンターテインメントのほとんどは、「フィクション」か「アイドル」のどちらかに分類され得る、と思っている。
たとえば、漫画や映画やドラマは、虚構の物語を楽しむ「フィクション」。対して、野球や音楽あるいはYouTubeやTikTokや恋愛リアリティーショーは、実在のキャラクターのパフォーマンスを楽しむ「アイドル」に分類できる。同じエンタメ好きでも、フィクションとアイドル、どちらをより好きなのかは、時代や性格によって異なる。
しかし宝塚歌劇団は、「フィクション」と「アイドル」の掛け合わせで楽しむエンタメなのだ。つまり、どちらが好きな人でも楽しめる。だからこそファンをたくさん獲得できるのだろう。
たとえば、「フィクション」として宝塚を楽しもうとする人にとって、その演目の多さそして幅広さは魅力のひとつである。宝塚では、1年間で最低でも新しい演目が9つは見られる。しかもどんなに人気の演目でも、基本は東西の劇場それぞれたった1カ月しか上演されない。「人気だからロングラン」はまず、ない。