自分の権利を知らずに過払いしていた保証人たち
貸与を受けるには、返済が滞った場合に備え、「人的保証」と「機関保証」のいずれかを求められます。
人的保証を選択すると、連帯保証人と保証人を1人ずつ立てなくてはなりません。原則として保護者が連帯保証人となり、伯父(叔父)や伯母(叔母)など、学生本人から4親等以内の親族が保証人となります。連帯保証人とは、お金を借りた本人とまったく同じ責任を負う人のことです。
本人と連帯保証人のいずれも返済できないとなれば、保証人に返済義務が及びます。この保証人を巡っては最近、多くの人が過払い状態だったことが判明しました。
保証人には民法で定められている「分別の利益」という権利があり、JASSOの奨学金の場合、返済義務は連帯保証人と分け合って2分の1となります。例えば債務額が500万円の場合、保証人は250万円の返済義務を負うことになります。しかし、JASSOは保証人からの申し出がある場合のみ「分別の利益」を適用し、申し出をしない保証人には残債全額を請求していたのです。
この対応に対し、札幌高等裁判所は2022年5月19日、「過払い分が不当利得と認識しながら支払いを受けた」と指摘し、過払い分に利息を加えた金額を支払うようJASSOに命じました。その判決を受けてJASSOは、今後、保証人に対して2分の1の額を請求する方針に転換し、併せて、記録が存在する過去5年以内に保証人から返済を受けた超過金額計約10億円についても返金手続きを進めていくようです。
このケースでは、「JASSOの対応はおかしい」と気づいた保証人が裁判に訴えたことで、知らずに同様の不都合を被った人たちにも救済の手が広がったわけですが、実は、知らないと損をすることはまだまだあります。
機関保証で延滞し続けると年10%の遅延損害金
もう一つの保証制度である機関保証は、親や親戚に保証人になってもらう煩わしさがない代わり、保証機関である日本国際教育支援協会(以下、協会)に毎月保証料を支払わなくてはなりません。
保証料は、貸与月額、貸与月数、貸与利率、返還期間等により異なりますが、月額12万円の第二種奨学金を4年間利用し、20年間かけて返済するケースでは、月々6487円の保証料が貸与額から差し引かれます。4年間の支払総額は31万1376円となり、決して無視できる金額ではありません(※2)。
注意したいのが、保証料を払ったからといって、返済できなくなったときに借金がチャラになるわけではないということです。返済が滞ればJASSOから本人に督促が来ますが、それでも延滞していると、JASSOから協会に保証債務の履行(代位弁済)請求が行われます。
請求を受けた協会はJASSOに残債のすべてを返済(代位弁済)し、その代位弁済した額を本人に請求(求償権の行使)します。仮に代位弁済額の返済を延滞した場合は、年10%の遅延損害金が課されます。
※2 日本学生支援機構「2022年度保証料月額(目安)」より