睡眠の質を高めるためにはどうすればいいか。順天堂大学医学部の小林弘幸教授と睡眠改善コーチの三輪田理恵さんの共著『なぜ、あの人はよく眠れるのか』(主婦と生活社)より「目覚ましのコツ」をお届けしよう――。(第1回)
ベッドの上で携帯のアラームをオフにする女性
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睡眠の質を高めるためには「睡眠圧」が必要

【小林弘幸(順天堂大学教授)】仕事帰りの電車の中、椅子に腰掛けて、疲労とほどよい揺れでウトウトしてしまう。または、お家に帰って夕食を済ませ、そのままソファでウトウト……。

気持ちのいい時間ではありますが、寝床に入る「本睡眠」の前、夕方以降に仮眠をとってしまうのは、夜の睡眠の質を下げてしまいます。睡眠は数回に分けてとり「合計で7~8時間眠れているから大丈夫」という考え方ではなく、「まとまった睡眠を夜にとる」というのが大事になります。

睡眠のメカニズムのひとつとして「疲れたから眠くなる」ということがあります。起きている時間が長ければ長いほど、眠る力が溜まっていきます。これを「睡眠圧」といい、本睡眠で深い睡眠に入るためには、この睡眠圧をしっかりと溜めることが大切になります。

眠りを促す睡眠物質のひとつに「アデノシン」というものがあります。人が起きて活動を始めるとアデノシンが溜まっていき、これが睡眠圧につながります。仮眠をとりすぎると、この「圧」を逃がすことになります。眠りに入ってからの90分が、睡眠の質を上げるために大切な時間。当然、睡眠圧をしっかり溜めた状態で眠ったほうが、深い睡眠に入りやすくなります

そのため、夕方以降に仮眠をとってしまうと、布団に入ってすぐのタイミング、一番深い睡眠に入りたいときに眠るための睡眠圧を、ムダづかいすることになるのです。なお、昼間に1時間以上の長い昼寝をすることも、睡眠圧を使ってしまうため、夜の睡眠の質を下げてしまう避けたい行動といえるでしょう。

帰りの電車で寝るのはNG

【三輪田理恵(睡眠改善コーチ)】快眠のためにも、帰りの電車で眠るというのは避けたい行動。その瞬間は気持ちよくても、家に帰っていざ布団に入ったときに寝つきにくくなってしまいます。

理想は、睡眠圧を溜めた状態で布団に入り、ぐっすり眠ること。たとえば、7時間眠りたいのであれば、寝る7時間前はしっかり起きている、というのが目安です。23時に寝て、6時に起きるなら、23時の7時間前、16時以降の仮眠は避けるのがベターです。どうしても夕方眠くなってしまう場合は、昼に30分以内の仮眠をとることでカバーするといいでしょう。

また、午前中の仮眠であれば夜の睡眠に影響が出にくいため、朝の電車で眠るのは睡眠不足解消の助けになります。