喫煙者の不眠症は非喫煙者の4~5倍にのぼる

【小林】喫煙習慣のある人は、眠れないときにタバコを吸うとリラックスできる、と思っている方も多いかもしれません。しかし、タバコには鎮静作用があるのと同時に、覚醒作用もあります。

喫煙にはさまざまな弊害が指摘されていますが、睡眠にとっても然りです。タバコを吸うと、寝つきにかかる時間が長くなり、中途覚醒の回数が増え、総睡眠時間も短くなってしまうということがわかっています。タバコは睡眠の大敵と心得てください。ちなみに、喫煙者の不眠症は、非喫煙者の4~5倍ともいわれています。

灰皿とタバコを持つ手
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タバコに含まれるニコチンは、アドレナリンの分泌を促します。血管が収縮して血圧が上がり、心拍数が上昇、その結果、交感神経を高めることになるのです。寝タバコの習慣のある人は、タバコが原因で不眠になっている可能性もあります。

さらに喫煙は、「睡眠時無呼吸症候群」のリスクを高めることも指摘されています。アメリカのある研究によると、喫煙者のいびきは非喫煙者の2.3倍、睡眠時の中等・重度の呼吸障害は4.4倍になることがわかっています。

さらに、受動喫煙者、つまり喫煙者の近くで煙を吸っている人にも、いびきの出現率が高くなるという研究結果があります。これは一緒に暮らす家族、子どもに対しても悪影響があるということ。タバコの煙により⿐やのどの粘膜が慢性的な炎症を起こし、空気の通り道である上気道がむくんでいびきをかきやすくなることが原因と考えられています。

「禁煙すると眠れなくなる」は勘違い

【三輪田】自分のためにも、家族のためにも、そして快眠のためにも、喫煙はやめるのが理想です。しかしその一方で、タバコをやめたときに起きる“ニコチンの離脱症状”のなかに、「夜間の中途覚醒」があるのも事実。そのため、禁煙すると眠れない、吸っているほうがよく眠れると勘違いをしてしまう人もいます。

禁煙は、意志の力だけでは難しい部分もあるため、禁煙外来など専門機関を頼ることもひとつの方法です。それでも、どうしてもやめられないというなら、せめて就寝2時間前はタバコを控えるようにしましょう。また、家族や同居人に影響が及ばないよう、喫煙環境にも細心の注意を払ってください。