マイナス金利のほかにも、日銀は指値オペを通じて、長期金利を0.25%までに抑制している。しかし6月の会合の直前である13日には、日銀が市場で国債を無制限で買い取っているにもかかわらず、長期金利が一時0.255%まで上昇した。また15日の相場では、7年物国債の流通利回りが一時0.3%台まで上昇した。

こうした市場の動きにもかかわらず、日銀はこれまでの大規模緩和を維持するスタンスを堅持している。しかし日銀が大規模緩和を維持すればするほど、市場の機能は損なわれてしまうことになる。そうした歪みがかたちを伴って具体的に表れた現象の一つが、今春以降、急速に進んだ円安と言っていいのではないだろうか。

ドル円チャートと秤
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円急落、じわり広がる物価高…値上げラッシュはこれから本番

円もまたフランと同様に、キャリー取引で売却の対象となっている。長期金利の上限を0.25%から多少引き上げるなどの政策修正でも、これまで急速に売られてきた円の巻き戻しが生じる可能性は高い。中長期的な円安のトレンドは変わらなくても、足元の急速な円安の流れにいったん歯止めをかける効果があるのではないか。

日銀の黒田総裁は行き過ぎた円安に対する警戒感を表明しているが、一方で政策修正には言及していない。すでに利上げの波に乗り遅れている日銀だが、その政策修正が遅れれば遅れるほど、円安が進むことになると警戒される。財務省による単独介入など容易に許されない現況では、円相場の安定のカギを握るのはやはり日銀である。

日本ではまだインフレが深刻ではないから利上げの必要はないという意見もあるようだ。しかし年度後半に入ると、様々なモノの値上げが進む予定であり、われわれの生活実感としてもインフレを強く意識することになるはずだ。金融政策は常に先手を打つ必要があるため、日銀による政策修正が早いに越したことは無い。

7月に入ると飲食業を中心に値上げの動きが強まる。また来年の輸入価格は、基本的に今年の為替レートを基準に決まる。そのため、今は円安の影響が軽微でも、来年の輸入価格には大きく反映されることになる。日本は食品の輸入依存度が高いため、身の回りの食品の値上けを体感するのは、今年よりもむしろ来年になるわけだ。

一方インフレ対策として、減税や補助金の給付を訴える声がある。参議院選挙を前に各党はそうした措置に前向きだが、こうした財政出動は本質的な解決策にならないばかりか、むしろ円安を促す危険性があることに留意すべきだ。いずれにせよ、取り残された日銀が動かない限り、また米FRBが利下げに転じない限り、円安の解消は望みにくい。

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