変わるウクライナ、変わらないプーチン
マイダン革命が起きた2014年以降、ウクライナ社会は変化しましたが、変わらなかったのは、プーチン大統領、その政権幹部、保守層や高齢のロシア人のウクライナに対する考え方です。
ヘルソンやマリウポリなどロシア軍占領地域では、1945年にベルリンの国会議事堂に掲げられたソ連旗「勝利の旗」のレプリカが掲げられました。マリウポリでは、ソ連の旗を掲げた高齢のウクライナ人とされる女性が、ウクライナ兵によってその旗を足蹴にされると抗議する映像がロシア側から公開されました。
ウクライナ側は「ロシア軍に家を壊さないように頼むために表に出た」ハルキウに住む高齢女性であると主張しており、その真偽はわかりません。しかし、マリウポリでは、すでに銅像化され、ロシアでも「アーニャおばあさん」と呼ばれ、土産物屋にフィギュアが並び、今回の戦争を正当化するシンボルとして扱われています。
ただ、ソ連旗の掲揚や「ソ連の旗を掲げる老婆」の像は、クリミアや2つの人民共和国にくわえてヘルソンなどでも進められている「ロシア化」を超えて、「民族友好」のノスタルジーを利用した「ソ連化」と言ってもいいでしょう。また、ロシア占領地域では、再びレーニン像を設置する動きもあります。もしかするとプーチンの最終ゴールはソ連の復活なのではないかとさえ思えてしまいます。
本来は、国と国同士の友好や相互の理解を進めるのは、いいことに違いありません。一方、民族と民族の融和を極度に唱えすぎると、同化政策になってしまい、それはかえって他民族の抑圧につながることがあるのも、今回の戦争でよくわかりました。過度な主張をせず、それぞれの国の文化や歴史に、お互いに敬意を払う姿勢こそが、国と国、国民と国民の本当の友好につながるのではないでしょうか。