ウクライナ戦争は日本にどのような影響を与えるのか。評論家の石平さんは「不凍港を失ったロシアが北海道北端の宗谷海峡や津軽海峡に侵攻する恐れがある」という。政治学者のロバート・D・エルドリッヂさんとの共著『これはもう第三次世界大戦どうする日本』(ワニブックス)より、2人の対談を紹介する――。(第1回)
議会と曇り空
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日本の危機感のなさは異常を通り越して異様

【石平】ウクライナ戦争以後も、日本政府の対応は相変わらず鈍い。“平和ボケ”していると散々言われ続けてきた日本国民ですら、“プーチンの核”、中国の“台湾侵攻”への脅威と向き合おうとしているのに対し、政府は百年一日のごとき対応です。

核武装の議論をしないばかりか、“核シェアリング”の有無について、議論を呼びかけた安倍晋三元首相の発言を政府みずからが否定したのです。

日本は「持たず、つくらず、持ち込ませず」の非核三原則ならぬ「言わず・言わせず」を加えた“非核五原則”だという元首相の批判もむべなるかなです。

国土の周囲を世界有数の核保有国、ロシア・中国・北朝鮮に包囲された比類のない危険地域にある国の政府の対応とは思えません。繰り返しますが、あまりに鈍すぎます。

今は帰化して日本人になった私ですが、生を享けた中国では文化大革命や天安門事件といった独裁政権が自国民を殺すことに何の躊躇もみせない国で育ってきました。

また、対談相手のロバート・D・エルドリッヂさんは、言うまでもなく世界一の軍事大国であり、第二次世界大戦後も紛争・戦争を繰り返してきたアメリカの国民です。そうした“外国人”だからこそわかるのですが、日本の危機感のなさは異常を通り越して異様でさえあります。

いつ第三次世界大戦が勃発するか分からない状況

【エルドリッヂ(以下エル)】都内の老舗ホテルに宿泊したのですが、そこでは政治家の政治資金パーティーで盛況でした(笑)。議員たちは7月(2022年)の参議院選挙に向けて余念のない様子ですが、その選挙が終わり内閣改造をし、8月になると夏休みがくる。9月からは国連総会が始まり、してもしなくてもいいような議論が行われる。この対談を行っているのは晩春ですが、貴重な時間があっという間に過ぎ去っていきます。

ウクライナ戦争を皮切りに、中国の台湾侵攻の危険性が日増しに高まり、どのタイミングで第三次世界大戦が勃発するかわからない状況に日本と世界は置かれているというのに、政府もメディアもまるで自覚がない。ウクライナも台湾もしょせんは“対岸の火事”だと思っているのでしょう。