ロシア軍の過大評価とウクライナ軍の過小評価
ウクライナ紛争をきっかけにアメリカでは、米政府の情報部門が中国の軍事力を正確に評価できていないとする指摘が出はじめた。中国人民解放軍は、アメリカの諜報機関が想定しているよりもはるかに強大なのだろうか。
ロシア軍に関する分析に目を向ければ、いまでこそウクライナ東部で攻撃を強めつつあるロシア軍だが、侵攻当初は「世界第2位の軍隊」ともてはやされた同軍が驚くほど弱かったとして話題を集めた。同時に、アメリカをはじめとする欧米諸国はウクライナ側の戦力についても正当に評価できておらず、即時敗退との予測が濃厚であった。
米政治専門サイトの「ポリティコ」は、ロシア軍の過大評価とウクライナ軍の過小評価という失態が重なった結果、米諜報機関への信頼が揺らいでいると指摘する。両軍の戦力と戦意を適切に情報収集できていたのであれば、戦況の行方を大きく見誤る事態は防げたとの指摘だ。
「キーウは3、4日間で陥落し、戦争は2週間で終わる」
アメリカの代表的な情報部門としては、国家情報長官直属の中央情報局(CIA)、および国防総省が管轄する国防情報局(DIA)がある。加えて各省庁や軍なども情報部門を抱えている。これら組織からの情報を大統領の諮問機関である国家情報会議が統括し、複数の報告書にまとめられるという流れだ。しかし、その精度が問題となっている。
今年初めに開かれた連邦議会の公聴会でアンガス・キング上院議員は、「われわれ(米国)は……(中略)……ウクライナの戦意を過小評価した」と認めた。議員はさらに、「われわれは、キーウが3日間ないし4日間で陥落し、戦争は2週間で終わるとの情報を得ていた。ひどい間違いであったことが明らかになった」と指摘している。