6月2日に公開された白書において同研究所は、「中国の軍事能力と軍機密に関する中国指導者らの意図を分析するうえで、脅威の過大評価は大いなる問題である」と指摘した。さらに、権威あるとされるアメリカ側の複数の評価リポートが、一部の例外を除いて頻繁に「不適切な、歪曲された、または不正確な証拠を採用し、極度に誇張された表現を用い、感傷的あるいは非論理的な思考を提示」していると非難する。
中国への恐怖感が前提にあることで、具体的根拠なくさらなる恐怖をあおる報告書が量産されているという。多くの報告書が「真実の客観的な探求よりも、局所的な政治、イデオロギー、もしくは感情的衝動に基づくとみられる大局的な評価に依存している」との指摘だ。
こうした傾向により、台湾問題や南シナ海の安全保障問題はゼロサム・ゲームの性質を帯びた武力解決へと傾倒しがちとなり、穏健化への機会が閉ざされると白書は主張している。解決策として同研究所は、中国軍の過大評価から脱却し、事実に基づく客観的な分析に転換するよう提案している。
米クインジー研究所は、アメリカの政治介入が「終わりなき戦争」を招いていると主張し、その終結を掲げる保守派シンクタンクだ。本質的に穏健派という点を差し引いて読み解く必要はあるものの、一定の筋の通った主張ではある。
脚光を浴びた民間の調査報道グループの手法
仮想敵国の秘密に迫る諜報活動は、過大評価にせよ過小評価にせよ、不正確な推論に陥りやすい。そこで、客観的かつ有効な手法として注目されているのが、OSINT(オシント:Open Source Intelligence)と呼ばれる分析手法だ。
「公開情報調査」とも訳されるこの手法は、一般に公開されている報道、商用衛星写真、ソーシャルメディアなどから関連情報を大量に収集し、それを読み解くことで秘匿されている事実に迫る。
この手法はロシア・ウクライナ情勢をめぐり、調査報道グループ「ベリングキャット」が多用し成果を挙げたことでも一躍有名となった。同グループは衛星写真やウクライナ市民がツイッターに投稿した被弾現場の写真などを解析し、ロシア軍が非人道兵器のクラスター弾を使用し戦争犯罪を行った証拠を収集・公開している。
米ワシントン・エグザミナー誌は5月、このOSINTを米諜報機関も採用すべきだと促す記事を掲載した。記事は、OSINTによる民間の情報戦が熾烈になった現在、「もはや諜報機関は明らかに、政策立案者たちにとって唯一あるいは最もタイムリーな情報源ではなくなった」と厳しく指摘する。