数時間から数日で政権崩壊するとの誤った予測は、NATO(北大西洋条約機構)加盟国が当初ウクライナへの武器提供をためらった原因になったともされる。不正確な状況分析がなければ、ウクライナは現時点での状況を超えて善戦していた可能性がある。正確な軍事力分析の重要性を物語る一件となった。

繰り返す過小評価の過ち…アフガン撤退の手痛い失敗

アメリカによる軍事力分析の正確性に疑問が投げかけられたのは、今回が初めてではない。公聴会の場でキング議員は、記憶に新しいアフガン軍の崩壊についても改めて指摘している。米軍は昨年5月から8月にかけ、アフガニスタンからの完全撤退を決行した。この際もタリバン勢力の過小評価という過ちを犯した結果、アフガン軍は撤退とほぼ同時に崩壊を迎えることになる。

砂漠での軍事作戦中に進むと敵の攻撃を実行している兵士の分隊のショット
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発端は2001年にさかのぼる。9.11同時多発テロの発生後、当時のブッシュ大統領はオサマ・ビンラディン氏をかくまったタリバン政権の壊滅をねらい、軍事作戦に踏み切った。目論見もくろみ通りタリバン政権は崩壊に至るも、その後も残党がテロを繰り返したため、これと戦うアフガニスタン政府軍を支援する目的で米軍は現地への駐留を継続していた。2021年になってバイデン大統領は、「米史上最長の戦争」ともいわれるこの軍事作戦の幕引きを図り、米軍の完全撤退を指示する。

だが、撤退完了まで2週間となった同年8月15日には早くも、タリバンにアフガニスタン掌握を許す失態を演じる。英BBCが同年9月に報じたところによると、米軍トップのフランク・マッケンジー中央軍司令官は、撤退がアフガンの政府と軍に「非常に有害な影響」を与えたと認めた。

この大誤算も、米諜報部門によるタリバン能力の過小評価が招いた惨事だといえる。両陣営の戦力と戦意を正しく分析できていたならば、米諜報機関は米軍撤退後すぐのアフガン軍崩壊を予見できていたはずだ。

ポリティコは、今年春のウクライナ情勢に対する分析不足と合わせ、わずか1年間のうちに2度も重大な予測ミスを犯したと指摘し、米諜報網は重大な局面において不確実であると嘆く。

米国で「中国脅威論」が再燃する事情

昨今の台湾情勢を受け、予測を外し続ける米諜報網に対して新たな懸念が浮かんでいる。果たして中国の脅威は正しく分析できているのかという疑念だ。

有力軍事サイト『グローバル・ファイアパワー』は中国軍について、アメリカ・ロシアに次ぐ世界第3位の軍事力だと分析している。同サイトは複数の指標に基づき「パワー・インデックス」を算出している。3位中国は、5位日本のダブルスコア以上の戦闘力をもつとの分析だ。