4 知的好奇心を刺激する
ケース:男性Dさん・法学部3年・県立水沢高校(岩手県)卒
Dさんが通った岩手県の小中学校は各学年40人程。周囲には田んぼが広がっている田舎の中の田舎だ。そんなD家では毎晩欠かさず、本の読み聞かせをする習慣があり、これが東大受験に影響をもたらし、「国語の勉強に困らなかった」そうだ。休みの日には、家族全員で東北各県の博物館を回り、そこで開催される体験イベントに積極的に参加したという。
東大生アンケートでも「小さい頃読み聞かせをしてくれた」83.2%。「本や新聞を読むことを勧めてくれた」75.9%。「博物館や科学館に連れて行ってもらった」64.6%と高い率になっている。自由回答では「本だけは好きなだけ買ってくれた」が目立った。
「質問したことを真剣に答えてくれた」というものも多く、子供の疑問を放置せず、親が分からなければ「親子で一緒に調べる」という経験をしていることも特徴だ。
このことが、いろいろなものに興味・関心を持ち、さらには「わかる喜び」を知るという人間に育つのだということが見て取れた。
普通の親は「カナブン」に何の興味も示さない
一方、普通の親はこんなに子供に時間を割いていない。やれ仕事だ、やれスマホだ、とオフの時間を自分自身のために使う。先日、散歩の途中で、幼稚園児と思しき女の子と歩いていた父親もそうだった。女の子は、父親に「こないだ見つけたカナヘビ(トカゲ)」について一生懸命語っていたが父親の耳には全く入っていない。歩きながら女の子はカナブンの死骸を発見し立ち止まったが、パパはそれに気づかずズンズン先に行く。そして、こう言った。「さっさと歩け!」。女の子は小さな声でカナブンに「バイバイ」と手を振った。
これだけのエピソードでこの女の子の未来を計ることはできない。だが、父親が面倒くさがらず、ほんの少しでもカナブンなどの生き物に興味を示していれば、さぞかし娘は満足し、父親との楽しい時間を思い出にできたのではないだろうか。
東大生の親は優先順位が違う。「幼い子供の脳と体を健康に育てること」を何よりも大切にしているのだ。
結局のところ、親の庇護の元で暮らすしかない小学生以下の子供たちに親ができることは、日々の暮らしをちょうどいい塩梅に整えるということだと筆者は確信している。それには、親自身が子供と共有する時間が限られていることを知り、その時間を楽しもうとすることが最も大事なのだと思っている。