2 ルールありきの中での自主性を育む

ケース:女性Bさん・文科3類2年、私立富士見中高(東京都)卒

Bさんの小学校の成績は「よくできました」が1~2個で、あとは普通。勉強面では「並」の子だった。親は子供に「勉強しなさい」と言うことはなく、教育方針は「何かを始める場合は基本的には子供の希望通りにさせる」というもの。

ただ、そこにはルールがあった。それは「中途半端はいけないので3年は続けて基礎を学ぼう」。Bさんの希望で始めたピアノもそろばんも、それほど上達したわけではなかったが、「うまくいかなくても諦めない」という教訓が東大受験時に生かされた。

東大生が育った家庭は総じてのびのびとした自由な家風だが、「何でもOK」ではない。「始めたら最低3年は続ける」のような家庭のルールに沿って、その中で子供の自主性を育てる傾向があるのだ。

反対に「子供を潰しかねない親」の特徴はルールがないことだ。

例えば、「子供が望んでいるから」となんでもかんでも許容する。携帯電話、ゲーム関係など端末を簡単に買い与え、時間制限なしに使わせるというようなことだ。

「何でもOK」派の真逆、「なんでもダメ」な親も問題がある。こうした親は子供から夢や希望という話が出るや否や、「それはやめろ」「どうせ無理だ」と否定に走りがちだ。そうなると「自分が何をしたいかすらもわからない」子供になる可能性が高い。

ドラゴン桜
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3 愛情を持って褒めて伸ばす

ケース:男性Cさん・文学部4年・私立共栄学園中高(東京・特待生)卒

Cさんの両親は自営業で世帯年収は300万円。通常、経済的に苦しい家庭は家族の関係がギスギスしがちだ。ところが、Cさん宅は違う。両親は「いいことは口に出して褒め合う。悪いことは、厄は落ちたから、もう起きないと考える」が共通認識だ。

東京大学
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なぜ、ネガティブな捉え方をしないかといえば「お金が苦しい上に、夫婦や親子で喧嘩したら、やっていけなくなるから」。そういう智恵・習慣があったため、小さなことでも褒め合う。お互いを肯定し合う家庭の雰囲気が、家族の病気や経済苦、Cさんの高3時の“全落ち”といった試練を乗り越え、前を向く力になったのだという。

「東大生アンケート」でも、「親が良いところを褒めて自信を持たせてくれたか」が79.5%に達した。やはり親が「褒めて褒めて褒めまくる」→「愛情をたっぷり注ぐ」→「興味を持ったことを好きなようにやらせる」という方針を貫くことが今の時代の子育てに合っていることが証明された。

アンケートでは「親が子供の趣味や好きなことを応援してくれた」91.1%、「親が話をよく聞いてくれた」90.4%、「親が失敗を責めなかった」84.3%となっており、同じ目線で寄り添い、会話する。そんな親の人間性が見えてくる。

ところが、“普通の親”は、こううまくはいかない。点数・順位・偏差値といった相対的な、他人様が決めた尺度で子供を褒めたり褒めなかったり。わが子自身の成長をしっかり見ずに、誰かと比較するのだ。そのため否定や苦言、叱責が多くなる。

筆者はこれまで子供の成績に一喜一憂して情緒不安定になる親をたくさん見てきたが、これをやめない限り子供の伸びしろが小さくなるばかりか、下手すればやる気を失って、潰れてしまうリスクがある。もともと地頭がよく、将来は東大も夢ではないが、親のせいで深海魚のように沈んでしまう子供の事例は数知れない。