コロナの後遺症は他の疾患でもよく見られる症状
一方、インフルエンザは重症化すると、肺炎を引き起こします。その意味で、オミクロン株は、インフルエンザほどにも、人の命を奪わないウイルスになったのです。
感染後の後遺症にしても、インフルエンザは「脳炎」という治療の難しい後遺症を生じさせることがあります。脳炎を起こすと、知的障害やてんかんといった後遺症が、生涯残ることがあるのです。
一方、新型コロナの後遺症としては、味覚障害、嗅覚障害、呼吸障害、倦怠感などがよくあげられますが、これらはすべて、他の疾患の後遺症としても、よく見られる症状です。医学的には、珍しいものでも、重いものでもありません。
風邪より少ないコロナの死者数
そもそも、日本人は、一年に何人くらい「風邪」で死んでいるのでしょうか。
これは、死亡診断書の死因欄に「風邪」と書くわけではないので、明確な数字を出すのは難しいのですが、年間約2万人が風邪を原因として「風邪関連死」しているのではないかというのが、私を含めた多くの医療関係者の見るところです。
一方、新型コロナで亡くなった人は、この原稿を書いている2022年4月上旬時点で、2020年以来の足かけ3年で、約2万9000人。それが2年余りの数字ですから、風邪の年間死者数よりも少ないと見られます。また、インフルエンザ関連の死者は年間約1万人と見られますから、死者数に関しては、新型コロナは、それとあまり変わらない感染症なのです。
逆にいえば、それだけの数の人々が、風邪やインフルエンザで命を落としています。
それでも、風邪やインフルエンザが流行しているとき、誰も「不要不急の外出は避けましょう」「県境を越える移動を控えましょう」とはいいません。ところが、こと新型コロナに対しては、「三年一日」の自粛策が続いています。
むろん政府も、私が紹介した程度の数字は先刻承知しています。しかし、「出口戦略」はごく小さな声でささやかれる程度で、実行には移されません。