「超高齢化」日本人の平均年齢は47.7歳

「老大国」という言葉がありますが、わが国が本当に「大国」かどうか、いや「大国だった」かどうかは、議論が分かれるところにしても、日本という国が今や「老国」化していることは間違いありません。

日本の高齢化率(総人口に対する65歳以上の人口の比率)は、2021年現在、世界で断然トップの29.1%。2位のイタリア(23.6%)、3位のポルトガル(23.1%)を大きく引き離しています。わが国は、一国だけ異次元の高齢化状態に達しているといってもいいでしょう。

そして、国民全体の平均年齢は47.7歳(2022年の推計値)。むろん、これも世界一の数字です。国民全体のちょうど真ん中になる中位数年齢は48.7歳ですから、国民のほぼ半数が50歳を超えようとしています。このような国は、古今東西、世界に例がありません。

私は、この超高齢化が日本人が「変われない」ことの主因だと見ています。

人の脳、とりわけ「前頭葉ぜんとうよう」は、40歳を超えると、目に見える形で縮みはじめます。

私は、30年間以上、高齢者医療に携わるなか、CTスキャンやMRI画像による脳の断層映像を5000枚以上は見てきました。その経験からいうと、加齢によって、前頭葉は目に見えて縮んでいくのです。

医学の教科書の解説図のように、頭蓋骨ずがいこつ内に脳がぎっしり詰まった状態を保てるのは、よくて30代までです。

40代からは、脳が萎縮しはじめ、頭蓋骨と脳の間に黒く写る隙間ができはじめます。なかでも、前頭葉の萎縮が進行します。

前頭葉は、大脳皮質だいのうひしつの前方部にあって、大脳のなかでも、創造性や意志・意欲、変化への対応など、高次こうじの精神機能を司っている部分です。その前頭葉が萎縮し、劣化すると、創造性や意欲が低下し、変化を好まなくなります。

同じ店ばかりに行くようになったら要注意

その傾向は、日常の行動にも表れ、たとえば若い頃はいろいろな飲食店を食べ歩いていた人が、行きつけの店でしか食事をしなくなります。

あるいは、若い頃は、いろいろな作家の小説を読んでいた人が、同じ作家の本ばかりを読むようになります。雑誌にしても、いろいろな種類の雑誌を買っていた人が、『文藝春秋ぶんげいしゅんじゅう』や『週刊ダイヤモンド』あたりを定期講読して、同じ雑誌ばかりに目を通すようになります。

ただし、これらの行動は、知的能力の減退を意味するわけではありません。知能指数が落ちているわけではないのです。『文藝春秋』や『週刊ダイヤモンド』を読み、理解する力は落ちていないのですが、他の雑誌に興味を示さなくなるのです。

そうした傾向全体を私は「前例踏襲思考」と呼んでいます。前頭葉の萎縮によって、変化を好まなくなる。その結果、「前例踏襲をよしと考える」傾向です。