漸進的に改革を進めるほかない
国際連合は特に経済社会問題、人道支援などでは重要な役割を果たしてきており、また安全保障にかかる問題で具体的な措置を打ち出すことができない場合であっても、国際世論の形成には重要な役割を果たしている。
今回のロシア軍の軍事侵攻についても、3月2日、国連緊急特別総会がロシアに対し「軍の即時かつ無条件の撤退」を求める決議を193カ国中141カ国、すなわち3分の2を優に超える賛成を得て採択したことは、国際世論形成にとって重要な意味がある。
この決議にはもちろん法的拘束力はない。しかしながら、「ロシアの行為は間違っている」という価値判断を国際社会として明確にし、かつ共有したことが重要であり、今後個別国家あるいは国際社会として何らかの措置をとる場合に、当該措置の説得性を内外に示す上で一定の役割を果たすものである。
国連については、矛盾はそれとして受け入れながら、現実に果たしている役割を大切にした上で、国際紛争の公正な解決のための改革を国際関係の変化と歩調を合わせつつ、漸進的に進めていくしかないであろう。ただ今回の軍事侵攻並びに国際社会の対応を経て、安保理が国際社会の新たな構造に合致した紛争処理機関となることに、一歩でも近づくことを心から望んでいる。