ロシアのウクライナ侵攻を国連の安全保障理事会は止めることができなかった。前ウクライナ大使の倉井高志さんは「ロシアの拒否権に屈した形だが、国連が緊急特別総会の決議で『ロシアの行為は間違っている』という価値判断を国際社会として明確にし、かつ共有したことは重要だ」という――。(第5回)

※本稿は、倉井高志『世界と日本を目覚めさせたウクライナの「覚悟」』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

2022年3月2日、米ニューヨークの国連本部で開催された国連総会第11回緊急特別会合
写真=EPA/時事通信フォト
2022年3月2日、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて開かれた国連の緊急特別総会で、ロシアに軍事行動の即時停止を求める決議が加盟国193カ国中141カ国の賛成によって採択された(ニューヨークの国連本部の総会ホールにて)。

改めて明らかになった国連安保理の問題点

今回のロシア軍によるウクライナ侵攻において、国連安全保障理事会は紛争解決のために機能しなかった。拒否権をもつ常任理事国の一つであるロシアが、まさに侵略国となったのだから当然である。

紛争解決のために具体的な措置をとろうとしたとき、特に常任理事国が何らかの形で関与しているときに、国連安保理が機能しないことは珍しくなく、ほとんど常態化しているとも言えるが、今回はまさに常任理事国自身が侵略国になったというケースであったので、安保理の問題点をほかに類がないほど鮮やかに見せつけることとなった。

ロシアが関与したときに安保理が機能しないことについて、実はウクライナには特別の思いがある。1994年、当時のクチマ・ウクライナ大統領は米国、英国、ロシア3カ国首脳との間で「ブダペスト覚書」に署名した。これは当時ウクライナが保有していた核兵器をすべてロシアに移送する代わりに、これら3カ国がウクライナの「独立、主権そして現在の国境を尊重する」(第1条)ことを約束したものである。