50を過ぎて怒られて思うこと

NHK時代は、新人時代を除けば、そんなに怒られることはありませんでした。どちらかというと、番組スタッフから「ありがとうございます。内多さんのおかげです」的なことを言われることがほとんどでした。

もちろん、意見が対立して衝突したこともありますが、それはそれですごく大事なことだと思っています。僕が間違っていたこともあるし、僕の提案で良い方向に改善されたこともありました。それぞれの価値観を戦わせて、いい番組を作っていこうという現場ですから、それは問題ないんです。

でも、いい歳をして、頭ごなしに怒られることはないわけです。ここまで言われるのは、ヘマをして、もう100%自分が悪いとわかった上で、みんなの前で怒られた新人アナウンサー時代以来です。あの頃は20代前半だったので、30年ぶりにそんな羽目になりました。

内多勝康『53歳の新人 NHKアナウンサーだった僕の転職』(新潮社)
内多勝康『53歳の新人 NHKアナウンサーだった僕の転職』(新潮社)

50を過ぎてバッサリやられた。落ち込みます。やっぱりプライドが傷ついたんでしょうか……自分でも気づかないうちに、妙な自意識がついちゃってたんだと思います。

「転職するから、初心に戻ってがんばります!」と口では言っていましたが、骨の髄までそう思っていたかっていうと、そうでもなかったのかもしれません。やっぱり華やかなところでやっているうちに無意識に優越感が芽生えちゃったのか。そこを、ガツン! と叩き潰されたということです。

別に、元アナウンサーだろうと何だろうと、今の職場では関係ない。当たり前のことですが、厳しい現実を突き付けられた気持ちでした。それはまるで、慣れ親しんだ体質を、全く違うバージョンに切り替えるための儀式のようで、本当に「初心に戻る」には必要なプロセスだったのかもしれません。

こうした日々がなんだかんだ続くうち、たまにですが、体のこれまで痛んだことがないような場所に痛みを感じるようになりました。背中の変なところがズキズキすることがあって、ちょっと怖かった。なんだか得体の知れない痛みでした。幸い、元々頑丈なので、一晩眠ると治りました。

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