「年間事業計画」をまともに読んだこともなかった

それが縁で、パワーポイントという最高のパートナーとも出会えました。NHK時代は一切縁がなかったパワポさんですが、仲良くなってみれば、プレゼン資料を準備するのにこれ以上の相棒はありません。無料で使えるフリーイラストのサイトから画像をコピーして貼り付けたり、次のスライドへの切り替えの演出を変化させたりできるようになると、どんどん世界が広がっていきます。なかなか懐の深いヤツです。

ただ、パソコンのスキルは身についたとしても、僕が担うべき仕事をこなす実力を身につけるには、さらに時間が必要でした。

「もみじの家の年間事業計画」というものを立てる。それがハウスマネージャーの大切な役割の一つです。でも、自慢ではありませんが、今までそんなもの立てたことがありませんし、まともに読んだこともありません。

物事は計画通りにいくわけないのに、どうしてそんなものを作るんだろう。どちらかというと、僕はそう考えるタイプでした。あらかじめ決められた事にとらわれることなく、その都度ベストな仕事をすることに集中すればいいし、その方がいいパフォーマンスができる。そんな価値観で今までやってきたので、計画作成のノウハウなんて、これっぽっちも培われていないわけです。

でも、それが仕事ですから、やらなければなりません。

「もう少し、責任を自覚してください」と怒られる

初年度の事業計画は、僕が着任する前にすでに立てられていて、ベースとなる収支見込もできていました。ところが、いざオープンしても、前述の通り、予想以上に子どもが来なかった期間が長く、当初の予定より収入が大幅に下がることが確実となりました。そこで、僕に指令が下ります。

「収入を下方修正して、まとめてください」

突然そんなこと言われても、その修正の仕方がわかりません。そもそも、基本的な収支の出し方がわかっていませんから、困ってしまいました。

しかも、まだ組織内の知り合いも数えるほどしかいませんでしたから、そういったことはどこの誰に聞きにいけばいいのかすらわかりません。一つのセクションでお金に関わるすべてがわかるということでもなさそうで、障害福祉サービス費の件はこっち、補助金関係はあっちで聞いてと、その都度、成育の建物内を上に行ったり下に降りたり、右往左往しなければなりません。いい運動にはなりましたが、当時はどこにいけばどんな情報が得られるのか、もうさっぱりでした(正直言うと、今でも完璧にはわかっていません)。

人脈がないというのは、孤独なもんです。新人の悲哀を感じました。そんな状況で満足な情報が手に入るわけはなく、提出する資料は内容がスカスカ。当然ながら、怒られます。

【上司】「もう少し、ハウスマネージャーとしての責任を自覚してください」

【僕】(……ガーン!)