プーチン化しつつある習近平
習近平は生来、自分の言うことを聞かない相手を嫌う。金持ちも嫌いだ。金持ちはいつでも高飛びできるし、海外逃亡した連中は、必ず習近平の悪口を言ってまわる(と考えている)。英語ができる人間も、世界中で悪口を言ってまわるから嫌いだ。
2021年「共同富裕」と言い出して、裕福な個人や大手企業に寄付などで富を社会に還元しろと促したのも、アリババ、テンセント、ディディチューシン(滴滴出行)などからカネを巻き上げるイカサマの仕掛けと見ていい。正式な税制で富裕層の納税額を増やすと、自分たち太子党にも影響が出るからだ。国家繁栄の財源を確保する発想ではないし、アリババ、テンセント、滴滴出行などが元気を失いかねない。
鄧小平が実証した“繁栄の方程式”はすでに消えかけている表れは、もう一つある。台湾への干渉だ。
現在の中国にとって、外資として資金と技術を持ち込んでくれる台湾企業は重要だ。中国で活発な企業は、ほとんど台湾系だからだ。半導体のTSMC、食品の頂新や味全ほか、鉄鋼、セメント、造船などでも台湾系の大手企業が目立つ。中国の産業エンジンは、台湾系が中核だといっていい。一般の中国企業にも職長などの要職には台湾出身者が多く就いている。
もし台湾有事で台湾企業・出身者の活動がストップすれば、中国の産業はほとんど機能停止に陥る。
しかし、現在のプーチン化しつつある習近平は、中国経済にとって台湾系企業が不可欠であることがわかってないのだろう。自分の偉大な中国が米国を抜き、経済や軍事で世界最大になることばかり考えている。太子党のエリート社会で育ち、盟友で国家副主席の王岐山を使って競争相手を粛清してきたから、現在の自分が何に立脚しているか、わからなくなったのだろう。もし習近平が台湾に軍事侵攻し、米国と喧嘩したら中国はもたない。
いまの習近平は、ビジネスの成功や英語や学習塾での勉強を否定し、自分の間尺に合う国家をつくろうとしている。自分の地位の安定が第一で、経済成長は彼の頭にないのだろう。いま起きているのは、経済成長の鈍化ではなく、中国の自爆(implosion)だ。